アレルギー表示ミスの教訓

アレルギー表示ミスの教訓

2回目の転職をし、新しい会社(3社目の会社)の雰囲気に一生懸命慣れようと頑張っていました。するとnews23のトップニュースで、前の会社(2社目の会社)が表示事故を起こしたと流れていました。アレルゲンが入っているのに表示していなかったため、健康被害が出たとのことでした。

工場、店舗でのアレルギー管理

専用のライン、専用の機械器具、専用の洗浄用具などを用意して管理する方法もありますが、その会社(2社目の会社)では全商品にアレルゲンを入れるか入れないかで管理していました。

私が入社したときには商品ごとにアレルゲンがバラバラだったので、アレルゲンが入っていない商品にはほんの少し入れる、他の商品にないアレルゲンが入っている商品はアレルゲンが入っていない原料に変えてもらいました。そうすることで店舗で仕上げる最終商品には義務表示7品目のうち3品目は全商品に入っていて、残り4品目は全商品に入っていない状態に一部の例外を除いてなっていました。

くるみが特定原材料に移行されることになり、1品だけあったくるみの商品も廃盤になることが決まっていました。これでくるみも全商品に入っていない状態となる予定でした。今後も3品目は全商品に入れ、それ以外は入れない方針で行くものと思っていました。(と言うところでこの会社を辞めました)

工場原料にアレルゲン

しかし新商品が発売されることになり、工場で作っている半製品(店舗で仕上げて販売しています)に、入れないことになっているアレルゲンが入っていました。表示を作る段階でアレルゲンを見落としていたと報道されていました。

私がいたときは工場原料は自社書式のエクセルの規格書をもらうルールになっていました。しかし自社書式では間に合わないので、まずメーカー書式の規格書をもらって表示を作っていました。後日、自社書式の規格書が届いたら、メーカー書式の内容(配合率やアレルゲン)と照らし合わせて確認していました。報道では2つの書式の規格書があったためミスを犯したと言っていたので、片方だけを見てこれらの照合ができていなかったのかなと想像しています。

しかしメーカー書式が先に出てくるので(と言うかメーカー書式でないと間に合わない)ので、メーカー書式の規格書を見て表示を作ったはずです。まさかメーカー書式にアレルゲンが抜けているなんてありえませんよね。。。

開発段階でわかっていれば・・・

普通の食品会社なら、開発が配合を組んだときに新規原材料については規格書を取り寄せるルールになっているのが一般的でしょう。しかしこの会社では開発はインスピレーションが大事と言うことで、開発担当者にそういうことはさせていませんでした。

開発担当者が手づくりした新商品が会議に出され商品化の可否を判定し、後は工場に丸投げ。アレルゲンも商品化の可否判定段階では考慮されませんし、ラインに乗るかどうかも判断材料にされていませんでした。

開発から私の所に回ってきたレシピを見ると「加熱してください」と書いてある原料を加熱後のトッピングとして配合を組んでいたりするレシピもあり、このような商品は差し戻しをしていました。

試作段階ではなくラインに載せるレシピを組んだ後に使用できる原料かどうかを判断する工程があると、一から配合を組み直さないといけないこともあります。発売日が迫っている中で目算が大幅に狂ってしまうリスクがあるのですが、それより開発担当者のインスピレーションが大切だという社風でした。

と言うわけでアレルゲンなどは表示を作る品証のシングルチェックになっていました。

紙の規格書から表示を組めるか

1社目ではeBASEを利用していました。と言ってもレシピ組みがいつもギリギリなのでeBASEで規格書を取り寄せていては本生産に間に合わなくなってしまいます。そうなっては困るので、とりあえずメーカー書式の規格書からエクセルを使って表示を組んでいました。どちらかというと商品を納めているスーパーやコンビニなどのお得意先様が製品のeBASEの提出を求めるので、そのためにeBASEを導入している感じでした。

2社目も電子カルテは使っていませんでした。扱う商品数がそれほど多くなく、毎月出る新商品も数えるほどですし、そもそも自社の店舗で売っているので必要がありませんでした。

3社目はeBASEを使っています。メーカーから出されたeBASEの規格書に、配合量を入れてボタンを押すだけで原材料名、アレルゲン、栄養成分を作ってくれます。頭を使う必要はありません。eBASEを使いこなすってこういうことなのかと感動してしまいました。eBASEなら表示の知識がない人でもある程度の表示は組めてしまいます

しかしeBASEなどの電子カルテからしか表示を作ったことがない人は、紙の規格書から計算して表示を作るのは至難の業かもしれません。一から表示を組んでいると、どうやって添加物をまとめようとか、どういう名前に変換したら良いんだろうとか悩みまくるのですが、そういうこともありませんからね。

表示を作ることができる能力

電子カルテしか扱ったことがない人でも面接では「表示を作っていました」とアピールしていることでしょう。電子カルテを受け付けて、電子カルテの仕組みを理解している人があれこれ提出企業に修正を依頼してきれいな電子カルテになったものを登録しておけば、何の苦労もなく表示を組むことができます。

アレルギー不記載の事故は、採用側は「どんな風に表示を組んでいたか」までつっこんで面接をしておかないと、期待していた能力の人を採用できない結果となることがあるのではないかと思った出来事でした。

表示作成ができる人材の育成

確かにeBASEメルクリウスなどの電子カルテを使うと簡単に表示が作れます。元のデータが正しくて適切に入力されていれば、アウトプットされた表示も正しい表示となります。表示を作る力量のある人がいればなんとかなるでしょうが、表示を作る力量はないけど電子カルテを使うことができる人ばかりになるとかなり危険です。品質部門の人材の育成においても注意が必要なポイントなのではないでしょうか。

お勧めはこちらの食品表示実践4日間コースです。わかりやすいので新しく品証に入った人に、勉強しに行ってきてもらうといいですよ。