乳成分検出でチョコレート自主回収

乳成分検出でチョコレート自主回収

大手製菓メーカーでアレルゲンの乳成分が混入していることがわかり、商品回収されています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190807-00000051-kyodonews-bus_all

表示にないアレルゲンの混入事故は、流通では非常にきらわれる商品事故です。しかしそれほど深刻に考えていない食品メーカーも中にはあるように見受けられます。今回のケースでも、なぜあの大手がこんな管理しかできていなかったの?という意外性を感じた方も多かったのではないでしょうか?

表示にないアレルゲンの混入事故の原因

いろいろなパターンがあります。よく回収しているのは商品の表示間違い(中身と違う商品の包材を使用した)です。表示間違いは記録を調べれば間違いに気づくこともできますが、それ以外は製品自体を検査しないとメーカー側は間違ったことに気がつきません。だから回収されていないだけで実際は結構起きているのかもしれませんね。

  • 間違えて別のアイテムや旧配合の包材を使ってしまい、結果的にアレルゲンが表示から欠落した。
  • 包材を作る時点で、アレルゲン表示を間違えていた。
  • 配合する時に原料を間違えてアレルゲンが入ってしまった。
  • 別のアイテムの仕掛品を間違えて本来とは異なるアイテムに使ってしまった。
  • 規格書上では入っていないはずのアレルゲンが、実際は原料に入っていた。
  • 使用原料の新しい規格書を長年取り寄せておらず、手元にある規格書ではアレルゲンが入っていなかったが、配合がマイナーチェンジをされており現在はアレルゲンが入っていた。
  • 原料メーカーから出された規格書では「乳のラインコンタミあり」になっていたが、ラインコンタミは無視していいレベルか、それとも無視できないレベルなのか、原料メーカーに確認せずに「ラインコンタミだったら表示しなくて良いだろう」と思い込みで表示を作ってしまった。
  • 製造ラインの管理がいい加減でアレルゲンがコンタミした。 など

原材料に乳成分は含まれていないが、工場で乳成分を含む商品と同じラインで製造していた

同じラインでは異なるアレルゲンを入れないように管理していると思います。少なくとも義務表示の7品目(小麦、卵、乳、エビ、カニ、そば、落花生)については、そのラインで生産する全アイテムに入れるか、もしくは全アイテムに入れないかの2択であることが理想です。

ただどうしても理想通りに管理できないこともあります。そんなときはアレルゲンなしのアイテムを生産してから、アレルゲンありのアイテムを生産して、きれいに洗浄してからまた生産を始めるという流れになっているはずです。

全商品にアレルゲンを入れる

例えば調合の機械が1台で、成形の機械が2台のようなライン組みになっていることがあります。100kg/バッチなどで調合してAのラインに持って行き、Aを少しずつ成形している間に、Bを調合してという作業を繰り返すことになります。

たとえばAが小麦あり、Bが小麦なしのアイテムの場合、調合の工程で小麦がBにコンタミ(微量混入)してしまいます。いくら「本品製造工場では小麦を含む製品を生産しています」と注意喚起表示をしたところで、最終製品からアレルゲンが検出されてはよろしくありません。

このようにライン組みされている場合、商品開発段階でアイテムBの配合を組むときに、ほんの少し小麦を入れるようにするのが一般的でしょう。100kg/バッチに対して100gの小麦粉など小麦アレルゲンを含むものを入れたところで、最終製品の物性や風味などに大きな差異は出ないでしょう。

そのかわり堂々と一括表示にアレルゲンとして小麦を表示できるようになります。小麦アレルギーを持つ消費者には食べていただけなくなってしまいますが、ラインのアレルゲン管理は容易になり、メーカーとしてのリスクも大幅に低減できます。

逆の発想で全アイテムから特定のアレルゲンを抜くというのも手です。その場合は工場内や製造フロアにまったくそのアレルゲンがない環境を作り出す必要があります。

コンタミしやすいのは小麦アレルゲン

小麦アレルゲンを持つ食品には、小麦粉や小麦澱粉がよく使われていると思われます。小麦粉や小麦澱粉は粉体です。他の義務表示アレルゲン(卵、乳、エビ、カニ、そば、落花生)と比べ飛散しやすいので、管理により神経を使わなければなりません。

アレルゲンごとに専用の器具で分けても、ラインを分けても、同じ空間で製造していると飛散するので結構コンタミしやすいそうです。小麦ありのアイテムと、なしのアイテムを同じ空間で製造している工場の方は、自社で製造した最終製品の小麦アレルゲンを、検査などで検証されておくことをお勧めします。

消費者から「乳アレルギーの症状が出た」

2018年11月に消費者から健康被害の連絡が入り、2019年8月までに7人がアレルギーの症状を訴えたとのことです。

消費者からのお申し出ですので、「乳成分なしなので安心して買って食べたのに、アレルギー症状が出た。製造工程を一度確認してほしい。」という訴えだったのではないかと推察します。おそらく第一報で、「乳アレルギーの人が異常を訴えた」という認識をメーカーは持ったはずです。

ただ、消費者がお知らせだけして自分の連絡先を教えなかったため連絡が付かず、詳細がつかめなかった可能性はあります。しかしその後、複数の人が訴え出ているので、どこかで乳アレルゲン混入を疑ったはずです。

アレルギー発症に対する一般的な対応

お申し出があった時点で消費者から商品を預かり、乳アレルゲンの検査をするのが食品メーカーの一般的な対応だと考えます。

消費者が全部食べたり捨ててしまった後で手元に残ってなかった場合は回収ができません。それでも工場にストックしている同ロット品やお申し出を受けたとき製造している別ロットの商品を検査できるので、検査をしないはずがないと思うのですが、どういった対応をされていたのか気になります。

もしかしたら大手なのでコールセンターを外注しているのかもしれません。外注先ではそれほど工場のこともわかっていないでしょうし、マニュアルに沿って商品を預かり、検査部門に現品を回していたものの仕事の引き継ぎがうまくいっていなかったのかもしれません。

もし消費者が買ったお店に申し出ていれば、流通が納得する検査結果などを持って行かないといけないので、事態は変わっていたようにも思います。ただこのあたりは記事から読み取れないので、憶測になってしまいます。

定期的な自主検査で乳成分が基準値を超えて検出された

定期検査が4月なので、年度初めに一斉検査を行う社内ルールになっているようにも見えます。しかし18年11月にお申し出があってから、19年4月の定期検査でたまたま見つかるまで何も調べていなかったのでしょうか? しかも公表が19年8月7日ですから検査で見つかってから公表まで4ヶ月もかかっています。

もしかしたら定期検査ではアレルギー検査ではなく、洗浄後にラインにタンパクの残存を検査していただけかもしれません。綿棒で拭き取って試薬に漬け、青く変化するかどうかで判定するキットもあります。しかしアレルギー反応が出ないところの精度まではないので、洗浄でアレルゲンが少なくなっている目安にはなるでしょうがアレルゲンが残っていない証拠としては使えません。

または定期検査で見つかった後、確認のため再検査、再々検査、再々々検査と乳が出ないことを祈って検査を繰り返していたのかもしれません。しかしアレルギー検査は微生物と異なり数時間で結果が出るので、何ヶ月も公表が遅れることは考えにくいでしょう。

わかっていたけど製造を止められなかったといったところなのでしょうか? 営業の「商品が止まったら困る」が押し通されてしまうと、内々で済まそうとか判断を先送りにしてしまうことがどこの会社でも起きがちのように思います。この食品メーカーではどうだったのか詳細を知りたいところです。

ラインの洗浄作業が不十分だったのが原因との発表

アレルゲンなしとありの商品を同一ラインで作るのですから、洗浄方法の妥当性を検証しているはずです。「この洗い方だったらアレルゲンは出ない」ことが確認されれば、その方法を洗浄マニュアルとして承認します。

この規模の会社ならきっとこういうことはされているはずですが、洗浄マニュアルが決まった後に製造現場でよく起きることがあります。

洗浄マニュアルはあるが守られていない

マニュアルがあるものの、やりにくい、時間がない、人がいない、などで有名無実になっているパターンです。

残業代削減などで「とにかく洗浄なんか適当にやって早く帰れ」、「仕事が早い奴ができる奴」という雰囲気を管理職が作っている場合などに起きます。品質は二の次で職場の効率が優先されてしまうのです。効率の前ではいかなることも自己正当化されてしまいます。

特に「製造現場第一主義」など、製造こそが会社の花形部署だという雰囲気のメーカーだと、品証は苦労が絶えません。何をやっても製造から文句が来ますし、製造がやりにくいと言えば品証はすべてを引っ込めて対策を練り直さなければならなくなってしまいます。

まだ文句を言ってくれるならましで、何も言わずに自分たちで楽できるように変えていることもあります。変更して悪影響がなければ良いのですが、場合によっては「マニュアル制定で意図した目的」が達成されない方法に変更されていることもあります。

こういう会社では経営者も「まぁ~ 品証も製造とうまくやってくれよ」と言う雰囲気で品証に譲歩を求めることが多いので、品証はできれば配属されたくない不人気部署になっていることでしょう。

作業者によって洗い方が違う

これも洗浄マニュアルが機能していないということです。人によって作業方法にばらつきがあると、最終製品もばらついてしまいます。定期的に最終製品で検証しても、本当にその検証結果がいつもの姿かどうか怪しくなってしまいます。

洗浄マニュアル作成後にライン設備が変更になった

書類はちゃんときれいに整っている会社に多パターンです。机上で考えたことを書類にしているので、書類上は立派につじつまが合っています。しかし実際は書類と現実が乖離しています。品証と工場にギャップがある会社はこのパターンに陥りやすいように思います。

本当は他の原因だが洗浄不足と言うことにしてお茶を濁している?

本当の原因をつかんでいるが、それを表に出すととんでもないことになりそうなので、スケープゴートを仕上げているパターンです。

こんな初歩的なことで大事故になってしまい、あまりにも恥ずかしくて言えない場合にもスケープゴートを作ることになります。

また憶測で原因を得意先に話してしまい、後から修正できなくなってしまった場合などに起きます。肩書きがあるけど大して専門知識もなくて、部下に専門的見地からの意見を求められない、無駄にプライドの高い人がやらかす傾向にあるように思います。自分の経験だけの狭い了見から出した憶測は、検証が終わるまで社外に出さないようにしたほうが利口です。

チョコレートは水が大敵

チョコレートは水分が大敵です。水分があると変質しやすいのです。

チョコレート工場では機械の洗浄も水を使ってするのではなく、共洗いで行っていると聞いたことがあります。

共洗いとは同じもので洗うことです。この場合は次に製造するチョコレートでチョコレートの機械を洗うと言うことですね。もしかしたらこのあたりのやり方に不備があったのかもしれませんが、チョコレートの製造工程はよくわからないのでなんともいえません。

結局はわからない

外側からは他社の事故の細かいところまでは、なかなかわかりません。しかし詳細がわからなくても、他社の事例はとても勉強になります。

もしかしたらこういうことではないかと原因を推察して自分の工場ではあり得ることなのか、もし同じことが自社で起きるとしたらどういうところにセキュリティーホールがありそうか、いろいろシミュレーションをして実際にラインで確かめてみるといいですよ。