食品会社が商品リコールの時にそろえておくと便利な情報
- 2019.10.30
- 品質保証
商品に健康被害が出そうな不具合があることがわかり、1個にとどまりそうにない時は回収に踏み切ることになります。私も品証時代に大きな回収を経験しましたが、こんな情報があるととても便利だと思いました。
目次
商品回収マニュアル
おおよその原因と可能性があるロットを特定して、回収対策会議を開いて~ とあらかじめ社内で規定されている手順に従って回収するかしないか決定し、回収する場合は行政や取引先に連絡を入れます。場合によっては記者会見や、社告を打つためメディアとの連絡も必要になってきます。
天洋食品餃子事件
このころ私は品質保証部に在籍していました。
同じ工場で製造していた
2008年の1月下旬にニュースになり大騒ぎになりました。前職では品証が客相を兼務しています。フリーダイヤルには「中国産使っていますか?」との問い合わせがたくさんかかってくるようになりました。
冷凍餃子を扱っているところはたいへんだなぁと他人事だと思っていたら、19時を過ぎてから製造委託品のバイヤーが品質保証部に来て「実はうちの製造委託品の原料もあの餃子の工場で作ってたんや」と真顔で言ってきたのです。普段冗談ばっかり言っている楽しい人なので、また笑いを取りに来たのか、今日は一段と演技がかっているなぁと思って本気にはしていませんでした。
しかし実際は天洋食品で製造した原料を使っていたのです。我々としては天洋の原料を国内の製造委託先で更に加工したものに販売者のラベルを貼っていたので、原料の工場までは指定してはいませんでした。それで社内は大騒ぎになりました。
社告
と言うわけで回収を決め、社告を打つことになりました。天洋の製造記録などの情報も手に入らず、原因もわからない、健康リスクがどれくらいかも判断できないかなり早い段階で、経営陣が回収の決断を下したのはさすがだと思いました。しかし世間に迷惑を掛けているので管理が不十分だったことは反省しなければなりません。
フリーダイヤルの回線を増やしたものの、社告が出てからは朝から晩まで鳴りっぱなし。それでも回線がつながらない状態で、消費者のみなさまにはたいへんご迷惑をおかけしてしまいました。
朝は早めに出勤してすぐに電話を取り始め、夜は23時くらいまで取っていたと思います。NHKニュース9でも「今すぐこの番号に電話して下さい」と放送されるもんですから、21時を過ぎても電話は鳴り止まないのです。
消費者が発する電話の第一声
どの電話でも「やっとつながった」が第一声でした。回線がパンクしているので何度掛けても話し中になってしまうのです。一発でつながる人は相当運が良かった人でしょう。
やっとつながったのでとにかく伝えたいことを消費者の方は機関銃のようにお話になります。こちらから問いかけを挟む余地はありません。
消費者が伝えたくなること
とにかくどういう商品が手元にあるかを一生懸命伝えてくださいます。
「□□スーパーでこないだ買うたんやけど、表に縦書きで○○と書いてあって、裏は緑色の字のラベルが貼ってあって、△個入りで、今テレビで回収って言うてるんはこれのことなん?」
似ている名前が10種類ほどあるうちの2品だけが回収対象になっていました。例えばこんな(↓)風に似ている商品名のものを出荷していて、対象が「焼売 6個入り」だけのような感じです。他の似ている名前の商品は、製造工場や原料が違うなどで対象から外れていても、消費者は大事件なので確認したくなります。
- 焼売 6個入り ← 回収対象品
- (AスーパーPB)シューマイ 6個入り
- 焼売 10個入り
- 大粒シューマイ
- お徳用焼売
- エビシューマイ
- ぷりぷりエビの焼売
- カニシューマイ
- 国産黒豚焼売
※ 商品名は説明用の例えです。
回収時、コールセンターに必要な情報
やはり見た目の情報を最初に消費者から提供されますので、回収の時は似ている商品のこのような情報(↓)を、コールセンターの各電話の前に貼り出しておくと非常に役に立ちます。
- 商品パッケージのカラー写真
- 1パックあたりの内容量
- JANコード
回収対象の商品情報は社内で伝達されるのですが、似ている商品名の商品の情報も目の前にあるとスムーズに電話で対応できます。
やっとつながって興奮しながら話されるので、こちらから「パッケージの○○を見て、その部分に書いてあることを教えてください」なんて聞く隙がないのです。
お話しされた情報を元にある程度商品を絞っていくほうがスムーズに対応できます。「バーコードの下3桁は○○○ですよね? それでしたら今回私どもが探している商品ではございませんので安心してお召し上がりください」と言えば早く次の電話に移ることができます。
電話が鳴り始めると、呼び出し音が途切れません。資料を作っている時間はとれませんので、事前に作っておいたほうが安心です。
お見送り
今では笑い話ですが、社告を出した日、品証部長は「ほな、あと頼んます」と言ってタイに旅立っていきました。そして回収が落ち着いた頃に帰国。
かなり前に予約したツアーだったのですが、なんて幸運を持っている人なんだろうとうらやましく思いました。
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