品質保証部員におすすめの+αスキル その4

品質保証部員におすすめの+αスキル その4

ニュートラルな気持ちで、相手に好意的関心を持ってオープンクエスチョンを使って問いかけることで、もやっとしか意識できていなかった自分の中の答えに気づいてもらうことを支援できます。相手を説得するためではなく相手を理解するために、相手が何を考えているのか興味を持って聞いていきましょう。そこに答えや問題解決のための大きなヒントが見つかるものです。ただしそれが最初に出てくるとは限りません。目の前の答えに飛びつくのではなく、じっくり相手の話を聴く必要があります。

1つ聞き出して油断してはいけない

1つ答えが返ってきてそれがすべてと思ってはいけません。答えはいくつか持っていて、人はさしあたりないところから話し始めます。質問したことに対して他にも思うところがないか確認することがポイントです。1つ目~2つ目辺りで答えている内容は、「こういう答えが常識的だろう」とか「こう答えておけば批判はされないだろう」ということが多いものです。

それ以降はじっくり考えないと出てきません。今まで深く考えたことがないので答えるのに時間がかかったり、「こんなこと言って変だと思われないだろうか」と答えるのに躊躇していることもあります。1分くらい空いても「間」ととらえじっくり答えを待ちましょう。

本当に聞いて欲しいことは3つ目以降にあることが多いものです。そしてそれはとても貴重な情報であったりします。答えが1個と思わずニュートラルな気持ちで相手に関心を持って全てを聞き出し受け止めるつもりで接しましょう。

聴き方は「要約 + 他には?」です。まずオープンクエスチョンに対して出てきたAについて深掘りしていき、十分聞いたと思ったら「がんばってAと言う対策をしてこられたのですね。(←Aの要約) 他にも気をつけて対策していることはどんなことがありますか?」と聞いていきます。AとBを十分聞いたと思ったら「Aと言う対策をずっとがんばってきて、同時にBという対策もしてこられたのですね。(←AとBの要約) 他にも気をつけて対策していることはどんなことですか?」と聞いていきます。

この要約がないと詰問調になるので注意が必要です。要約を入れて丁寧に聴いていきましょう。

会話の中で製造側で二の足を踏んでいるところなどがわかってきますので、そこは品証が手助けするとポイントが高い部分です。私の経験ではパソコンスキルが足りなかったりで、つまづいていることが多いように感じます。

構成

品証「~の対策は普段どういったことをしていますか?」
製造「~についてはAと言う対策をしています。 」

~ Aについて経緯や感じている効果、対策の徹底具合など深堀りしていく。 ~

品証「Aと言う対策をしているのですね。Aの他にも何か対策しているのですか?」
製造「Bと言う対策をしています。 」

~ Bについて経緯や感じている効果、対策の徹底具合など深堀りしていく。 ~

品証「Aと言う対策と、Bという対策をしているのですね。他には?」
製造「ん・・・(間) 実施していませんがCと言う対策をしようかと考えたことがあります。」

~ Cについて思いついた経緯やまだ実施に至っていない理由、実施するうえで壁になりそうなことなど深堀りをしていく。 ~

品証「Aと言う対策と、Bという対策をすでに取っていて、Cと言う対策もしようとしているのですね。他には? 」
製造「他にはないです。 」
品証「ABCで一番気になっているのはどれですか? (ABCで一番効果があり(なさ)そうなのはどれですか? ABCで一番やりやすいのはどれですか? など)」
製造「Cです。」

~ Cをやるに当たって、計画や課題などを深掘りしていく。深掘りしている中で手伝えそうなことが出てきたら提案をする。 ~

質問のやりとり例

品証「今回毛髪混入のお申し出品が返ってきています。この職場では毛髪混入に関して重点的にどこに気をつけていますか?」

製造「毎日朝礼で服装点検していますよ。」

品証「どのように服装点検しているのですか?」

製造「毎朝の朝礼の時に隣同士で服装をチェックしています。」

品証「隣同士でチェックして不適合の人はどれくらいいらっしゃいますか?」

製造「あんまりいないね。」

品証「あまりない中でいる不適合の人は、どのくらいの頻度でいるのですか?」

製造「あー いないです。ゼロです。みんなちゃんとしているので問題ないです。」

品証「みなさんちゃんとした服装されているにもかかわらず、今回毛髪混入が起きてしまったのですが、第一報を聞いて何が頭に浮かびましたか?」

製造「前までほとんどなかったのにうちの職場ばかり続いているのはなんだろうって・・・」

品証「前までほとんど毛髪混入がなかったのは、何が効いていたとお思いですか?」

製造「服装点検もやってたけどリーダーがざっと見るだけだったんだよ。それを隣同士で見るように変えたんだよ。細かく見るようになったから、作業服に抜け毛がついているのに気づくこともあって、件数は減ると思っていたんだけど続いているね。なんでだろう?」

品証「服装点検に力を入れていて、最近は服装点検のやり方も変えて、精度が上がっているはずなのに毛髪混入が続いていることに疑問を感じていらっしゃるんですね。服装点検の他に重点的に気をつけていらっしゃることはありますか?」

製造「作業中に当番にローラーがけさせてるよ。」

品証「こちらの職場ではどんな風にしているんですか?」

製造「決められたとおり2時間に1回やらせてるよ。記録もチェックしてルール通りの頻度で出来ているか確認している。」

品証「作業中のローラーがけをやり続けることで削減できそうですか?」

製造「ん~ 昔からやっているからってだけだからね。」

品証「昔からと言うのは?」

製造「俺がこの職場に異動になるずっと前からやっていることだからね。やり始めたころに大幅に減っていれば効果があるんだろうけど、効果があるのか無いのか俺に聞かれて持って感じ。」

品証「効果があるのか無いのか、直感的に今の時点ではどう思っていらっしゃいますか?」

製造「かけても一部の人を除いてほとんどの人は毛髪が付いてないしね。全員をかけて回って効果があるのかは疑問だよ。」

品証「一部の人というのは?」

製造「『Aさん』とか『Bさんの作業服に毛髪が付着していた』とときどき報告がある。」

品証「職場のローラーがけ当番から報告を受けたとき、どう思われたんですか?」

製造「あーまたこの2人かって感じ。本人にも気をつけるよう注意しているんだけどなおらないんだよね。正直どうやったら毛髪混入が止まるのかお手上げだよ。」

品証「Aさん、Bさんとそれ以外の人とは何が違うんでしょう?」

製造「Aさんは年齢がけっこういってるところかな。Bさんはちょっとおっちょこちょいというか何させても危なっかしいところがあるし、雑なところもあるよ。」

品証「服装点検や作業中のローラーがけの他にも気をつけていらっしゃることはありますか?」

製造「ちゃんと入口でローラーをかけるように言っているよ。」

品証「それはいつ頃からのことですか?」

製造「ここにリーダーとして配属されてからだからこの1年くらいかな。」

品証「ちゃんとローラーをかけるよう言うようになったきっかけはなんだったんですか?」

製造「前の職場では上の者がローラーがけについてやかましく言ってたら毛髪混入が減ったからね。この職場ではローラーがけのことをうるさく言う人がいなかったし・・・」

品証「この1年でローラーのかけ方は変わりましたか?」

製造「俺が毎日朝礼で言っているからみんなやっていると思うよ。」

品証「ちゃんとみなさんローラーがけされているとお感じなのですね。」

製造「いっしょのタイミングで入るときは見ているよ。」

品証「一緒のタイミングじゃない方は?」

製造「全員のを見ているわけじゃないけど、そんな変なやつはいないと思う。」

品証「一度じっくり確認してみませんか? 私が職場入口でローラーがけの様子をビデオに撮るので、それをいっしょに確認しませんか?」

製造「じゃぁ○日の○時で。」

もうちょっと聞いてみる

1つめの答えが全てと思い込んで聞くのをやめてしまわないようにしましょう。

例文のようにすんなりはいかないでしょうが、食いついて話を聴いていくと「あ! そういえばこういうことも気になってたんだ」とか「ここ出来ていたつもりになってたけど、一度ちゃんとデータを取ってみようかな」と相手が自分自身の内側の考えに気づくことがあります。

自分で気づけば気良くやってくれることが多いので、品証のストレス軽減につながるはずです。また、行動した結果が思わしくなかったとしても、ここまで来ていれば「こないだこの方法でやってみたけどあかんかったから、次はこないしようと思ってんねん」と前向きに考えてくれることが多いです。

実際作業をしている人のほうが品証より遙かに多くの情報を持っています。品証が最初からああしましょうこうしましょう、ああしなさいこうしなさいとしゃしゃり出るより、製造側が普段何に気をつけていて、どんなことが気になっていて、どこで二の足を踏んでいるかを良く聞き出してから製造と品証の両者でアイデアを練った方が、私の経験では割とうまくいくように思います。ぜひお試しください。

スキルを習うところ

この種のスキルは、がんばったら誰でもある程度のレベルまでいけるスキルです。本を読んだりして習得するのも良いのですが、先生から直接教えてもらうのが一番手っ取り早いと思います。私はこちらで教えてもらいました。

ビジネス能力開発株式会社
エニアグラムとコーチングを東京で教えておられます。

キャリアオー
大阪でキャリアコンサルタントのカウンセリング実技を教えているところです。リーダーの大久保さんはジミー大西に似ています。

参考図書

対話型ファシリテーションの手ほどき

事実を聞き出す質問を用いて気づきを引き出す方法を解説されています。薄いのですぐに読め、質問の作り方を変えることができるかも? セミナーもされています。

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