品質保証部員におすすめの+αスキル その2

品質保証部員におすすめの+αスキル その2

前の記事で、指摘をするより質問で相手の中にある答えを引き出すスキルを身につけると、わりと楽して品証が務まる(かもしれない)と書きました。ではどういう態度で接していけば良いのでしょうか?

いい質問とは?

自分が知りたいことばかりを質問していると、質問されている方は尋問されているような、利用されているような気になってきます。このような質問では、その人の中の答えを探索する支援はできません。何でもかんでもとにかく質問すれば良いというものでもないのです。

自分の情報収集のための質問ではなく、相手が気づきを得るような質問を繰り出さなければなりません。

一を聞いて十を知る

本来の意味は十個先を察すること、一部を聞いて、全部を理解できることです。

しかし「1つ聞いて10個の質問を思い浮かぶことが出来る」という意味にも取れるのではないでしょうか。1個聞いて10個の質問ができるようになるには、相手の話を相当しっかり聞いていなければなりません。

これって友人同士の会話ではやっているのですが、改まった会話をしようとした瞬間出来なくなってしまうことがよくあります。質問をしようとして話が耳に入ってこなくなるのです。

友人との会話では「ほんでほんで その後どないしたん?」「え~っ!それってどういうことなん?」と話の流れに合わせて自然と合いの手を挟んでいます。普段の友人との会話を思い出して、ただただ相手の話を聞くことがポイントです。話を聞き終わった時点でいくつももっと聞いてみたいことが一瞬で湧いてくるくらい聞くことに集中しましょう。

傾聴

傾聴といえばロジャーズです。ロジャーズは非指示的カウンセリングの手法を編み出したアメリカの臨床心理学者です。しっかりクライアントの話を聞くだけで、クライアントは答えを見つけ快復していくという考え方です。

ロジャーズは傾聴の姿勢としてこの3点を挙げています。

  • 無条件の肯定的配慮(受容)
    • 聞き手が話し手を無条件に、つまり「あなたが~の場合だけ認めます」といった条件をもたずに、また、聞き手の価値観によって「この部分は大切、この部分はそうでもない」などの取捨選択せずに、聞き手から表現された心の全体性の「どの部分も」きちんと大切にしていく、と言う態度のこと。
    • 相手の話の内容を肯定もせず、否定もせずに「ただそのまま、受け止めていく」こと。
  • 共感的理解(共感) ≠ 同感、同調
    • 話し手の私的な世界を、その微妙なニュアンスに至るまで、あたかもその人自身になったかのような姿勢で感じ取り、そこで感じ取ったことを丁寧に相手に「伝え返していく(≠オウム返し)」こと。
    • 話し手の「内的準拠枠(≒自己概念)」を感じ取り、自分もあたかも相手と同じ「ものの見方、感じ方、受け取り方、価値観」を持っていたら、こんな風に感じるだろうなと、まさに相手の内側に立って、その気持ちをありありと推測し、想像しながら聴いていく姿勢。
  • 一致(純粋)
    • 聞き手自身が、話し手の話に虚心に耳を傾けながらも、同時に、自分自身の内側にも深く、丁寧に触れながら、話し手とともに進んでいく姿勢のこと。

※ 日本マンパワー発行 カウンセリングに関する理論より抜粋

しかし傾聴の姿勢を体得するのはなかなか難しいものです。とりあえず、相手の考え方をおもしろいと思うこと、自分との違いをおもしろがることから始めてみましょう。「なんでこんな風に考えるようにならはったんやろ? 超おもしろいんですけど~」という気持ちで相手に興味を持つということです。

ついついやってしまう指摘

相手の話を聞いているとついつい「そんなやり方じゃダメだ」と批判したくなったり、「私だったらこうするのに」とアドバイスしたくなったりします。しかし興味津々で相手の話を聴いているとこういったことはしないはずです。

自分がしゃべりたくて関わっているのではなく、相手がどういう人なのか、何を考えているのか知りたくて関わっていくのです。このように深掘りしていくことで相手にストーリーを語らせ、そのストーリー同士がやがてつながってきます。話している本人さえ気づいていなかったつながりが見えてきます。

指摘が大好きな人もいます。そういう人は往々にして「指摘する」という手段を用いて、「優越感に浸る」という私的な目的を満たそうとしている人だったりします。聞き手が自分の賢明さ、聡明さを誇示する必要はありません。話し手の内部にあるモヤッと引っかかっていることを、言語化して引き出す手伝いをすることに注力したほうがいいのです。

指摘する本人は「何とかよくしてやろう」と顕在意識では考えて指摘していますが、その根っこは「俺はこんなことまで知っているんだぞ。どうだ! すごいだろ?」と思っていることが多かったりします。まわりの人にはバレバレなのですが、この本心は潜在意識に隠れていて本人はなかなか自覚できません。このような関わり方では相手が心を開くことは難しくなります。

品証部門は頭でっかちになりがちです。こうあるべきなど監査側の常識である「主観」や、相手はこう思っているはずと言う「決めつけ」で関わるとあまり良い結果は生まれません。外部監査員のまねごとをする必要はありません。何を話しても安全な場、安心できる場を提供することで心置きなく語ってもらいましょう。「そんなやり方では~」「私なら~」が出てきそうになったら、これらを押しのけて「なんでこんな風に思ったはるんやろ? むっちゃ興味ある~」に頭を切り替えましょう。

興味津々で聴いていると

興味津々で相手の話を聴いて自由に話してもらっていると、話し手が自分の中にありつつも気づいていなかったことを発見します。本人にとっては些細で、気に掛けることもなく記憶の奥深く沈めてしまっていたことが多いのですが、品証の立場では知り得なかった情報がいっぱい隠れています。そこに本人が気づくと「ダメ元でもちょっとそれやってみようか」となり、輪が転がり始めます。

私の経験では、もしそれをやってうまくいかなくても「じゃぁこっちでやったらうまくいくのではないか?」と自ら次の手を考えてどんどん動いてくれることが多かったです。1個気づいてしまうと「そういえば、あれも気になってたなぁ」と思い当たるところがあるんでしょうね。また、そういう行動をしている人のところには周りから「こんなことが気になっていて」と情報が集まりやすくなるでしょうし、情報を受け取っても今までは「また思いつきでしょうもないこと言うてきよって」と聞き流していたことが、「そういう見方もあるんかもしれへんなぁ」と気になるように意識が変化したというのもあるかも知れません。

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