年々減っているように見えるクレーム推移グラフの作り方

年々減っているように見えるクレーム推移グラフの作り方

品質保証部時代、経営陣に毎月クレーム状況を報告する機会があるのですが、報告の仕方が鮮やかだった上司がいました。その上司のおかげで品証は社内でまぁまぁ頑張っているような雰囲気を醸し出せていたような気がします。

クレーム件数のグラフ化

会議資料は紙で配付せず、プロジェクターで見せる方式の会社でした。品証部長は毎月自社工場のクレーム累計件数を報告するのですが、下図のようなグラフを作って発表していました。

※ 説明用のイメージです。どこかの企業の実際の数値ではありません。

期間ごとの累計なので、右端の最新の件数は絶対に少なくなります。左端は多目の年を選んでおいておけば、棒グラフが高くなります。このグラフの左から右に線をつなげれば下図のようになります。

凸凹はあるものの、毎年減少傾向にあるように見えませんか? 実際ポインターを動かしながら上図のような線を表現し、「グラフからもわかるように、年々クレーム件数は減ってきています」と毎月の会議の席で発表されていました。

グラフの見せ方

売り上げのように上がることが良とされるグラフを作るなら、同月同日や曜日を合わせて累計し、過去のデータと比較します。しかし私が勤めていた会社では、クレーム件数はある期間の累計で表示され、現在の分は前月末までの累計など、期間途中までの累計で比較していました。

凸凹の全体が下がっているように見えると、下がっている年の方(下図)に目が行きます。するとやっぱり全体的に減少傾向にあるなぁと頭にすり込まれていきます。発表する本人も「下がってほしい」という思いがあるからこそ下がっている部分に目が行き、自分自身も暗示にかかったのではないかと思います。

ちなみに両端を消したグラフは下図のようになります。これだと減少傾向には見えず、横ばいに見えますよね。

本当にクレームを減らしたいなら

この手法のおかげで品証は厳しく追及されることもなく、のんびり緩い居心地の良い職場となっていました。しかしグラフの見せ方を工夫してもクレームが減るわけではありません。各クレームに対し根本的な対策をしないといけないのと、予防的措置を講じていかなければなりません。

※ 私が品証にいたころの話ですので、現在はこのような錯覚は使っていないと思います。

期間の終了間際

そろそろ1年のクレームを締めて集計する期末が見えてくると、目標を達成できるかが注目されてきます。しかしこの頃になると「すでに累計ppmは■ppmとなっており、目標の○ppmを達成するには製造の人の頑張りが必要です」と製造の責任の雰囲気を醸し出していきます。

期末だけクレーム撲滅キャンペーンを張るより、年中厳しくやってそれが当たり前になれば社内の雰囲気も変わっていくのでしょうが・・・

錯覚の利用と期末の焦り

個々のクレームに対してはそれなりに対策したりもしていたのですが、こんな感じだったので私が品証にいた頃はなかなかクレーム発生率が減りませんでした。ぬるま湯体質で働きやすい職場ではあったのですが・・・

怪しいグラフで煙に巻いた人も大概ですが、「これ幸い」と何もしなかった私もダメ人間でした。