品質保証の人材を育成する人
品証の業務は専門知識が無いとなかなか務まりません。経験だけで身に付くものではないので、人材を育てにくい部署でもあるかと思います。
ぼやく上司
品証に所属していたときにとてもお世話になった上司がいます。その人のおかげでいろいろな品質保証に関する知識を身につけることができたのだと感謝しています。
どんな人かというと独り言が多い。
その人はいろいろマニアックなまでに勉強されているのでとても詳しい人でした。ただ独り言が多かったのです。口癖は「最悪や~」。
「最悪や! 最悪や! なんでこんなことすんねん。江川さ~ん。私は~と言うとったんやで。前に調べて~というデータも取ってあるんやで。手順書もちゃーんと作ってやっているのに、勝手にルール変えてからに。そやからこんなことが起きるねん。最悪や!」と言って過去の実験データを見せてくれました。そのデータから派生していろんな話に広がり、基準を設定した経緯などを教えてもらえました。
別の時には食品衛生小六法やHPを開いて「また知らん間に勝手にルール変えているからこんなことが起きるんや。大量調理施設衛生管理マニュアルでは~と決まっているからこういう基準を決めてそれでやっとったんやで。それを・・・ 最悪や!」など基準を設定した根拠も教えてもらえました。根拠に使う元資料はどこを見れば良いのか、この方のぼやきのおかげでいろいろ覚えました。
他社のリコールのニュースなどを見て「~のことでは往生したんや。ここに移転する前の●●工場で製造してたころにもおんなじことあったんや。そやからうちでは~というルールを決めたんや。」など私が入社する前の失敗事例とその対策も教えてくれました。
一人でブツブツぼやいているのですが、そのおかげで周りの人も自然と品証のマニアックな知識が身についてしまいます。自分で本を読んでもなかなか頭に入ってきませんが、その人の独り言はすっと入ってくるのです。そしてしばらくすると同じ話をするので頭に定着してしまいます。
本人は周りを育てるつもりで言っているのではないでしょうが、このぼやきのおかげでいろいろ教えてもらえました。改めて社内講習の時間を設けずとも、こんな方法で知識を次の世代に渡すこともできるので参考にしていただければと思います。
ちなみにこの上司が「帽子なんかみんなちゃんとかぶっているんやし、帽子の中から髪の毛が落ちるなんてありえんやろ。作業中のローラーがけなんて意味ないんや。そう思うよなぁ? 江川さん。」と言ったことがずっと引っかかっていました。
当時はその言葉の意味を納得したものの、どうやって証明したらいいのか私にはわかりませんでした。しかしその言葉を聞いてから10年後にやっとその意味がわかり、このようにHPなどを介して皆様にお伝えしています。
毛髪混入防止対策を通じて社会に役立つことで、その上司に少しは恩返しできていたらうれしいことです。
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