原料資材名や型名の付け方

原料資材名や型名の付け方

食品工場では開発部門が決めた配合と仕様書に沿って食品を製造しているものと思います。この仕様書に載っている器具(金型、口金など)や原料資材(特に留型のものなど)の名前の付け方が原因で、トラブルが発生したことはないでしょうか? 製造は「もっとちゃんと仕様書に書いておけよ」と言い、開発は「何度も打ち合わせの時に確認したんやから、本番も責任者がちゃんと見ておけよ」と言い、結局声が大きい方が勝っておしまいみたいになっていませんか?

加勢大周新加勢大周みたいな型名の付け方

金型や留め型の原料が商品リニューアルのために変更される場合があります。変更のタイミングに合わせて新しい金型に「新○○」(←○○はその金型を使って作る商品名)という名前が付けられ、リニューアル商品の仕様書には「新○○を使って生地を▲g/個に成形する」と掲載されます。

しばらくするとまた同じ商品がリニューアルされます。リニューアルとは言いつつ原料高や消費税率がアップして1個あたりが小さくなる場合もあります。そして金型がまた新たに製作され「新○○」と名付けられます。そうすると1つ前のリニューアルで製作された金型とかぶってしまいます。そこで1つ前の金型はある日を境に「旧○○」や単に「○○」と呼ばれるようになります。このようにして本来「新々○○」と言うべき金型を「新○○」としてその作業場に迎えることになります。

例えば「濃厚バターのマドレーヌ」を作る型があったとすると・・・

新発売時
型名濃厚型
数年後の
リニューアル時
型名濃厚型新濃厚型
さらに数年後の
再リニューアル時
型名新濃厚型

濃厚型
新々濃厚型

新濃厚型

新々濃厚型は言いにくい、本来の濃厚形はもうすでに無くなっている。そういう事情で「新濃厚型」がただの「濃厚型」に名称変更されてしまうことで混乱が起きることも・・・

しかしこの「新」を付ける方式は製造する側からすると非常に分かりづらく混乱を来す原因になってしまいます。まるで1993年のワイドショーを飾った騒動みたいになってしまうのです。

最悪の場合は間違えて生産してしまうことになります。リニューアル品の仕様書で「新○○」と指定しても、製造担当者が今まで慣れ親しんでいた変更前「新○○」だと思いこんで製造してしまうと、その分は売り物にならなくなることもあります。食品工場の場合、機械が動き出すとそれなりのロットが製造されてしまいます。どこかの工程で気づいて止まれば良いのですが、初回生産だと製造部門の人は初めて見る商品なので「これは間違っている」と気づく可能性は低くなります。

Windows方式

ウィンドウズはリニューアルすると新ウインドウズにはなりません。きちんと識別できるようになっています。

  • 1992年 Windows 3.1
  • 1995年 Windows 95
  • 1998年 Windows 98
  • 2000年 Windows 2000
  • 2001年 Windows XP
  • 2007年 Windows Vista
  • 2009年 Windows 7
  • 2012年 Windows 8
  • 2015年 Windows 10

「新」を使わずにバージョンを表現した方がややこしくなく、間違いを防ぐ意味でも作業担当者に優しい表現になると思います。

開発者の立ち会い

金型などの名前の付け方を工夫することで改善されますが、初回生産は開発担当者も製造に立ち会った方が確実です。テーブルテストから製造ラインに落とし込む段階で、開発担当者と製造の責任者はより良いものが製造できるよう幾度となくやりとりをします。やりとりをしている二者間では通じ合っていたことが、実際に製造に携わる作業者には伝わらないこともあります。初回生産立ち会いは開発がアウトプットした配合表や仕様書が正しく製造の作業担当者に伝わるかという検証にもなります。

失敗

リニューアルで重量を少し減らす商品がありました。いわゆるステルス値上げというやつです。

この商品は配合変更せずに重量を減らすことでリニューアルすることになりました。重量変更は製造ライン担当者も理解していたのですが、成形の機械にセットする金型の変更は理解していませんでした。するとその日は夜の生産スタート時からグラムを減らした薄っぺらいペ商品ばかり製造してしまい、ありゃりゃとなったことがあります。

金型の名前が上記のような原因だったかはずいぶん前のことなので記憶があやふやですが、夜なので開発の立ち会いも難しいというのがあったのかもしれません。その後は初回生産時は仕様書をコピーして製造ラインで確認するようになりました。確認しても何と照らし合わせるかが大切なので、包装前の完成品画像が載っている仕様書はわかりやすいのではないかと思いました。

まとめ

商品リニューアルに付随する原料や器具などの更新に於いて、「新○○」と命名するのは避けたほうが無難です。「新○○」と名前を付けてしまうと2回目以降のリニューアル時でややこしいことになってしまいます。バージョンを表す言葉で区別できるようにした方が間違えにくくなるでしょう。