食品会社のクレーム処理対応のコツ 消費者への調査報告書

食品会社のクレーム処理対応のコツ 消費者への調査報告書

食品工場で働いていると最初は消費者の感覚なのですが、徐々に製造する側の感覚になっていきます。お申し出をいただいたときにこの感覚が響いてきます。

実際のところ、お申し出品は100万個のうちの数パックです。しかし消費者から見れば、手にした1パックが全てです。「同じ商品を買ったことあるけど、今まで食べた分は大丈夫だったのだろうか? 今回たまたま気づいただけで、今まで知らずに食べてしまっていたんじゃ?」、「私の手元の1パックで済んでいるんだろうか? 他のお客さまのところに行ってしまった分は大丈夫なんだろうか?」と消費者は想像されるものです。

煮物から異物

商品と一緒に椎茸や根菜類と筑前煮にしたところ、鍋の中で異物が浮いてきたとお申し出がありました。お客様宅を訪問しお話をうかがうと、私どもの商品に付着していていたに違いない、こんな物が入っているなんて気持ちが悪いとのこと。異物とまだ使っていない残りの商品をお預かりしました。

顕微鏡で異物を調べても、つぶれていたり機械を通った形跡はありません。工場内を調べても同様のものは発見できません。お預かりした残りの商品にも異物は入っていません。もちろん他のお客様からの同様のお申し出もありません。

わかりませんでした

こういうときは「工場内を徹底的に調べたのですが、混入経路はわかりませんでした。」と報告することになります。しかしお預かりにうかがったときの雰囲気から、この回答ではとてもじゃないけど納得してもらえそうにありません。さて、どうやって文書をまとめて報告に伺ったものかと頭を悩ませました。

どんな工場で作っているのか知っていただく

「こういう工場で作っています」と一から十まで説明するしかないだろうなぁという結論に落ち着きました。原料の受け入れからトラックに載せてスーパーのセンターに向け出荷する所まで、各工程の写真を撮り、それぞれの写真に一言説明を付けました。

これを報告書と一緒にお持ちしました。まず、報告書の内容を説明し、探したものの現時点では原因や混入経路の特定に至っていないことをお詫びしました。予想通り納得していただいておりません。もう少し説明の時間があるかお聞きし、画像でどのような工場で作っているかを知ってもらえることになりました。

各工程の写真を見てもらいながら説明していきます。「こういう工場でこんな風に作っています。この工程は原料の受入工程です。ここでは箱の外観を点検し、破損しているものは受け取りません。温度測定もしており、例えば10℃をこえている冷蔵品は受け入れません。受け入れ時点では箱が密封されているので異物が入ることはありません。受け入れた原料は冷凍庫、冷蔵庫、常温倉庫に速やかに移動させます。冷凍庫の中はこのようになっており~ ~~~」と各工程の説明していきました。ご納得まではいかなかったかもしれませんが、お怒りの度合いは減ったように感じました。

異物が入るようなとんでもない工場で作っているに違いない

消費者にとっては手元にある商品が全てです。そこに異物が入っていたり、不具合があれば、「この1パックで収まっているはずがない。他にもいっぱい出ているはず。きっといい加減な人たちが、汚い工場で作っているんだろう。」と思ってしまうものでしょう。

紙面でのバーチャル工場見学は、お申し出者のこのような先入観を少しでも緩和するのに有効な手段だったのかなと思います。

営業でも重宝される

報告から帰った後、他の商品群のバーチャル工場見学も作成しておきました。営業でも古い人は製造出身者が多いのですが、それ以外はほとんど工場のことを知らないまま営業に配属になっています。知っていても旧工場のことで、新工場のことはあまり知らない部分もあります。営業担当者が流通へ報告に行くときに、念のためこの資料を持っていく機会が増えていきました。

流通の窓口の方も工場を見たことがなければ想像が膨らんでいきます。かと言って、時間が無い中わざわざ工場に来てもらうのも難しい部分があります。どんな所で作っているのか、たとえ写真であっても百聞は一見にしかずでわかってもらえるのだなぁと思った出来事でした。