原因は製造工程だけじゃない 食品工場に於ける原料由来の異物混入防止対策

原因は製造工程だけじゃない 食品工場に於ける原料由来の異物混入防止対策

食品への異物混入対策は何はともあれ製造工程で混入しないように対策を取ることが大切です。かといって製造工程以外で混入する可能性もゼロではありません。ではどうすればいいでしょうか?

製造工程で原料から作業担当者が発見している

けっこう製造工程で原料の異常が発見されていたりします。異常を見つけても「あ~ ここで見つかって良かった。ポイしとこ。」で、原料のその部分だけ廃棄して使っていることも多いのではないでしょうか? 異常があまりにも多くて、異常があって普通という感覚になってしまっていることもあります。

しかしどんな場合でも、報告に上がらないと改善のきっかけがつかめません。 やはり異常を発見したら報告を上げる仕組みを作る必要があります。

原料の異常は原料メーカーで改善する

異常があることを織り込み済みで、購入した側が選別する想定の下、納入されている原料は除外します。それ以外の原料は原料メーカーに改善を要求する必要があります。

原料メーカーも教えてもらって初めて製造工程のエラーに気づき、改善する機会を得るのです。連絡がなければ「現状の製造方法でうまくいっているはず」と判断されてしまいます。効率アップやコスト削減のための改善はするかもしれませんが、これでは品質向上のための改善をしようとは思わないでしょう。

社内発見クレームの見える化

社内の製造工程で発見された異常は、所定の用紙と共に品質保証部などの担当部署に集め、データベースに入力していきます。データベース化することで、なんとなくの印象でとらえていた異常を数値として捉えられるようになります。

前職では私が入社した当時から報告を上げる仕組みはありましたが、ほぼ機能していませんでした。月に数件の報告があれば良い方で、品証の担当者が紙に手書きして貼り出し、「これだけ見つかって良かったね」で終わっていました。

私はマイクロソフトアクセスでデータベースを作り、更に発見された異常をデジカメで撮って貼り出すようにしました。どこの部署で発見されたものか、どんな異常だったかわかるようにしてタイムカードの前に貼り出しました。こうすることで、確かに品証が受け取ったと発見者に伝わるようになりました。社内発見報告書を書いてもどこでどうなっているのかわからないと誰も出しませんから、徐々に各職場に制度が浸透していくこととなりました。

その後、品証に配属された若い人たちがこのシステムを発展させていきました。

例えば異物部分だけ取り出して報告が来ても、いまいち状況がつかめません。発見者に会いに行っても休みで捕まらなかったり、話を聞いてもわかったようなわからないような感じだったりで困っていました。

そこで10kgなどの「大きな原料で異常が見つかったら、そのままの状態で内線で連絡をください」と、製造と話を付けて来た人もいました。内線が来たらデジカメを持ってそのラインに行き、どのような状態なのか発見時の状態のまま写真を撮るのです。これができるようになってから、原料メーカーも原因を絞り込みやすくなったのではないかと思います。

原料バイヤーの人事評価

徐々に発見の報告が上がるようになりデータもたまってくると、原料バイヤー部門が気にするようになり、人事評価の項目の一つに加えられました。数値化されるので、数値目標にしやすいのです。

どの程度まで気にしているかはバイヤーそれぞれでしたが、原料メーカーに対し「品証から言われてて、クレーム多い所からは量を増やせません」と品質に関する話が出るように雰囲気が変わっていきました。

その結果、原料メーカーも件数を気にするようになってきました。気にするようになったので、原料メーカーの製造工程も変わっていきました。それまでは適当に作っていただけのところもありましたが、自社のこの工程では問題なしという記録を作るところも現れてきました。何でもかんでも原料メーカーの所為にされないよう、アリバイづくりを始めたのです。

表彰制度

カット野菜メーカーの制度をまねて、社内の発見者に対しても表彰制度ができました。そのカット野菜メーカーでは発見数を集計し、各工程に於けるベスト5を3ヶ月ごとに表彰していると教えてもらったのです。工程によって見つけやすい工程と、あまり発見されない工程があるため、全社で順位付けするのではなく工程ごとに表彰しているとのことでした。

最初は年1回とか半年に1回で表彰していましたが、現在は毎月の全社朝礼で「ようこんなん発見してくれはったなぁ」と言う発見者を表彰するようになりました。表彰は社員、パート、派遣の区別はせずに選出し、賞状とともに社員食堂の食券などをプレゼントしていました。

発見者のタイプ

発見数が多い人は偏っています。エニアグラム的に言うとタイプ4が多いようです。タイプ4は「違い」に敏感なので、「なんかいつもとちがう」を敏感に感じ取ることができる特性を活かしているのかも知れません。

社内発見以外の表彰制度

社内発見以外でも表彰できることがあれば表彰していこうとなり、前職ではいろんな表彰制度を作ろうとしていました。

参考データ

アクセスで作った社内発見のデータベースと、社内発見報告書のエクセルテンプレートを置いておきます。右クリックでダウンロードして自社に適したものにカスタマイズしてください。