セミナー「品質部門とバイヤーと営業」

セミナー「品質部門とバイヤーと営業」

食品商社さんから「営業部門しか知らない人間ばかりなので、食品に関する仕事を別視点から見たときにどう見えているのか、品質部門と購買部門を経験した人として我が社の社内研修で話をして欲しい」とご依頼を受け、2022年10月20日にお話をしてきました。

商社さんのセミナーなので聞いてくださるのは営業マンばかりです。今までは製造や品質部門などを対象にしたところでお話しすることが多かったのですが、営業の方が対象なのは初めてでした。

テーマは「品質部門とは何をしているところなのか」と「バイヤーから見た営業の人」。2022年7月に起きた事件を例にリスクコミュニケーションの必要性や私の過去の対応事例を挙げて品質部門が見ている世界を、困った営業と私が困っているときに助けていただいた営業の事例などを挙げ、買う側の目線をお伝えしました。

品質部門はだいたいどこの会社も目指すことややることは共通していると思いますが、バイヤーは会社の方針によって、個人の性格によって千差万別です。そのようなバイヤーに対峙しないといけない営業マンは大変だと思います。

例えば大量に消費している会社だから相手にされているだけなのに己の力と勘違いしていたり、家庭の主婦程度の衛生知識しかないバイヤーがコスト最優先で安全を無視した原料選定をしてしまって事故につながったりいろいろあるでしょう。かと言って自分が悪いとは理解できないバイヤーがほとんどでしょうから、買う側が改善されるパターンは余り期待できません。売る側が涙を飲んでガマンすることも多いと思われます。

ISOには「定期的に業者を評価しなさい」という要求事項があります。これは業者を評価することで、会社としてバイヤーの人事評価につなげ、取引業者も含めて改善することを目的にしていると思います。得てして購買部門担当者はいかに原材料費を下げたかが人事評価の中心になります。コストダウン第一主義に走ると、他部門にしわ寄せが行ってしまいます。例えば値段優先で異物が多い原料を選んでいたり、納品が遅れて生産に支障が出たり、納期の変更で対応が悪くて社内調整の時間に手間取って人件費を垂れ流しにしたり、などなど様々な支障が出てきます。これら業者由来のトラブルの統計を取り、その統計を定期的にレビューすることが必要です。「この業者にどのような改善要求をしたのか」、「改善が見られない業者と取引を続けているバイヤーは誰なのか」と話が出ることで、コストダウン第一主義に走ることを牽制する意味があるのだと思っています。

原料の品質でこけたら、その後の製造がどれだけがんばっても漏れが出来てしまいますから、原料の品質というのは結構重要です。業者に全部なすりつけるのではなく、業者の選定に問題はなかったのかを改善するきっかけになれば売る側も買う側もより良い関係になれるのではないかと考えるわけです。全部署が品質部門的な目で見てくれればいいのですが、なかなかそうはいかない企業もたくさんあることでしょうね。品質部門ってなかなか理解されませんから・・・

拉致問題に取り組まれている松石議員のHPを拝見していたらこんな逸話が載っていました。品質部門が理解されない理由ってこういう所にあるのでしょう。ほとんどの企業の品質部門は長兄パターンだろうなと思って読んでおりました。

基山町議会議員 松石健児の徒然日記 より
https://kiyama-web.jp/kenji/Diary/Pub/Shosai.aspx?AUNo=1329&Pg=2&KjNo=82

東洋医学の祖と言われる春秋戦国時代の伝説的な医者、扁鵲(へんじゃく)という人がいます。(実在しなかったなど諸説あり)

扁鵲は三人兄弟の末っ子で、長兄と次兄も医者でした。ある日、魏の文王が扁鵲に「三人の中で誰が一番の名医か?」と訊きました。すると、扁鵲は「一番は長兄、二番が次兄、私は一番下手です」と答えました。次に、文王は「では、なぜ上の二人は有名ではないのか?」と訊きます。すると、扁鵲は…

私は病気が重くなってから治します。患者は苦しみ家族も心配しています。そのような中で、鍼や薬や手術で治します。その為、私はすごいと思われて有名なのです。

次兄は、患者が病気にかかり始めたとき治してしまいます。症状も少なく患者も苦しくありません。その為、次兄は軽い病気を治すのが得意だと思われています。

長兄は、症状が出る前に、患者本人も病気だと気づかないうちに治してしまいます。その為、彼は人々から認められず、わが家の中でだけ尊敬されています。

本当に凄いのは大病を患わせないドクターなのです。注意深く患者さんの様子や話の中から起こり得る疾患を予測して、生活改善でそれを防げたら治せたら…でも、おそらくそれは患者さんにも患者さんの家族にも気づくほどの変化がないのであまり感謝されないでしょう。

世間話も聴いてくれる、かかりつけの医者がいることは大事ですね。

東京ではカールが買えないのでお土産に持って行きました。特に珍しがられることもなく、違うもののほうがよかったかな〜