手洗い洗剤の選び方とコスト削減の盲点

手洗い洗剤の選び方とコスト削減の盲点

手洗い洗剤はどのように選んでいますか? コスト削減は原料だけでなく、手洗い洗剤も対象にされている会社も多いのではないでしょうか。

盲点は薄め方

品質保証管掌役員がサンプルをもらってきて「こっちの方が安いからテストをしてみるように」と指示を受けました。

現行使っている手洗い洗剤は薄めて使うタイプでした。しかしサンプルはストレート。販売している単位体積当たりの単価は安いものの、結局は高くつくことがわかりました。

乾燥きくらげのような水戻し原料などと同じで、使用する状態で単価を比較しないといけないのは洗剤も薬剤も同じです。

手洗い後の菌検査の仕方

手を洗ってもあまり泡立たない、すすいでもなかなかヌルヌルがとれない手洗い洗剤を使っていたこともあります。

本当に落ちているのか気になって調べたところ、結構な菌数がいました。別のメーカーの洗剤を使ってみると普通に泡立つし、すすぎもスムーズです。そして手の表面を拭き取って検査すると有意に菌数は低くなりました。

洗剤で手を洗って、すすいだ後にすぐ拭き取ると意外と菌数が高く出てしまいます。ペーパータオルで水気を拭き取ってから、ふきふきチェックで手の表面を拭き取りましょう。

手洗い後の菌数の基準

調べたのですが明確な基準はないようです。おそらく人によって持っている菌数が異なるので一律に基準は決められないのではないかと思います。ご存じの方は教えてください。

ただ外科医の手術前の手洗いでもゼロにはならないことはわかりました。

手洗い洗剤って殺菌剤?

有意に結果が異なるので、洗剤メーカーに問い合わせました。「あまり強力に油膜を落とすと手荒れの原因になり、黄色ブドウ球菌の住処になってしまいます。今お使いいただいている手洗い洗剤は手を保護しつつ食品製造に影響のないレベルまで洗えるよう調整しているのです。」のような答えが返ってくるかと想定していました。

しかし返ってきたのは「我が社の手洗い洗剤は世界中で使われているので問題はありません。」とのこと。その根拠となるものを出すように再度問い合わせをかけないといけなくなってしまいました。

すると返ってきたのは「in vitroで今お使いの手洗い洗剤と菌を接触させた結果ですが~」という資料を出してきました。問い合わせをしているのは殺菌剤じゃなくて洗剤です。いかに洗い流せるかを質問しているのですが、予想外の答えが返ってきました。

単なる御用聞きの営業マン

営業マンでは仕方ないのかと思い「開発とか研究の人とか話のわかる人を出してください。」と言うと東京からこの方の上司が来社されました。営業の上司の方もこれまで返ってきた答え以上のことは言えない方でした。その方は「御社でどんな手洗いをしているのか、手洗いしているところを見せてください」と言うので、せっかく来られたのだからと手を洗って見せ、その場で拭き取って培地に塗りました。(後日検査結果を送りましたが東京から来た方を含めあまりよろしくない結果でした。)

「洗剤を持ち帰って調べたい」とおっしゃるで、洗剤を容器ごと渡しました。すると東京に帰ってから来た連絡が「ロット記号を確認したところ、有効期限が切れていました。有効期限は2年ですのでそれを越えたものは手洗いの効果を保証できません。」とのこと。もちろん容器などに有効期限は書いてありませんし、有効期限があるというのも初耳でした。

他のメーカーの手洗い洗剤でも期限が切れたら途端に手洗いの効果が落ちたりするのでしょうか。それともこのメーカーだけなのかな?

結局、製造部長の一声でこのメーカーの手洗い洗剤は他社の手洗い洗剤に切り替えとなりました。そしてこの営業マンも工場への出入り禁止となりました。

自動洗剤供給機

問題の手洗い洗剤は手を近づけるとセンサーが感知し、ジェル状の手洗い洗剤が絞り出されて落ちてくる機械にセットして使っていました。洗剤がなくなると機械の中に詰め替え用の容器をそのままセットするタイプです。遠くてもダメ、近すぎてもダメというセンサーが反応する距離感をつかむのがなかなか難しい代物でした。

他社の手洗い洗剤に切り替わり、この洗剤供給機もすべて取り外すことになりました。取り外してわかったことですが、機械の下が汚れまくっていました。泡立ちが少ないから追加で手洗い洗剤を出そうとして下から手を近づけ、機械の下に触れてしまっていたのでしょう。しかし下からわざわざのぞいて見ることもしないので全く気づいていませんでした。

センサーだから非接触と考えるのは短絡的なのかもしれません。実際にどのように使えるかを見てから判断しないといけないと思った事例でもありました。