福島県産等の輸入規制緩和を台湾が公表

福島県産等の輸入規制緩和を台湾が公表

台湾が福島県産などの食品輸入規制緩和方針を固めたと報道がありました。

TPPへの参加を目指し、科学的根拠をもとに安全性を判断する国であるとの姿勢を示したものとされています。では今まで台湾政府は科学的根拠に基づかない輸入規制をしていたのでしょうか。

台湾による日本産食品の輸入規制の変遷

農水省のHPによると東日本大震災発生(2011年3月11日)直後の2011年3月26日に輸入停止措置が始まりました。この頃は日本も大混乱で、「安全です」と胸を張って言える状況ではありませんでした。一旦止めておこうとするのは当然のことでしょう。

その後2015年5月15日から輸入規制が強化されます。震災発生から4年が経ち、落ち着いてきていました。調査も行われており、危険なものはごく一部であることがわかってきていた時期です。それなのに規制が強化されました。

台湾国内の食の安全事情

廃油ラード事件

輸入規制が強化される少し前の2014年9月、台湾ではグリストラップの廃油などを精製して混ぜたラードが流通していたことがわかりました。このラードは多くのところで使われており、大きな社会問題になりました。

https://www.afpbb.com/articles/-/3025297

頂新グループの不正発覚

その1ヶ月後、この廃油ラードを仕入れて知らずに使っていた食品企業(頂新グループ)が、傘下の企業でも飼料用の油を食用に使っていたことが明るみに出ました。

https://www.ys-consulting.com.tw/news/53289.html

連日報道となり、この企業グループは徹底的に叩かれました。日本で言えば雪印や日ハム、不二家の商品が店頭から下げられた時のような感じです。

https://www.nna.jp/news/show/129899

このように2014年は食の安全への不信感が高まった年でした。同時に食品行政にも台湾国民の厳しい目が向けられました。

輸入規制が政争の具に

統一地方選挙

2014年11月29日に第9回統一地方選挙の投票が行われました。

2014年は食の安全も大きく揺らいだですが、2014年3月には中国とのFTA締結に反対して学生が立法院(国会議事堂)を占拠するなど国民党の馬英久政権に対し大きな不満がたまっていました。

即日開票の結果、与党国民党は惨敗しました。

産地隠蔽?

国民党馬英久政権が台湾国民の支持を失っていく中、食の安全への関心が高まっていきました。そんなときに台湾食品衛生当局は2015年3月24日に、輸入を禁じている福島、茨城、群馬、栃木、千葉の5県産だったとして回収を命じます。

https://www.sankei.com/article/20150327-ML7ZRURNKFPKFNT6KP3A3SWDHE/

これらの多くは固有記号の商品で、本社の住所や販売者の住所と製造所の住所を混同したことによるものだったとか・・・

ここを突いてきたのが国民党への不満の受け皿だった当時野党の民進党です。民進党は原発ゼロが党是で、反原発グループからも支持されていました。民進党は輸入解禁に反対を唱え、馬永久政権に揺さぶりを掛けます。

台湾の所々で見かける垂れ幕。「もう一つの福島なんて要らない」と書かれている。心ないスローガンに日本人としては複雑な心境。モヤッとして終わりでなくて、台湾でこんな行動を起こされた日本人も。

一方与党国民党も、馬英久総統と王金平立法院長の対立で輸入解禁をしない方向に舵を切ります。このような背景で2015年5月15日から規制が強化されたものと思われます。

国民党の内部

馬英久総統はエリート、王金平立法院長はたたき上げという感じでしょうか。馬英久はええかっこしい、王金平氏は昭和っぽい古いタイプの政治家のイメージです。日本で無理やり例えるならば馬英久氏は吉村さん、王金平氏は二階さんみたいなイメージかな?

https://news.yahoo.co.jp/articles/f2afc1cbdbc928a7b3fbe4eac4043ce44dc6a831

政権交代と住民投票

2016年1月16日の第14回総統選挙では国民党から民進党に政権が移りました。総統となった蔡英文ですが、パッとせず支持を失っていきます。

民進党支持者が離れていく中で2018年11月24日の統一地方選挙と同時に、輸入禁止の継続を問う住民投票が行われました。

https://www.roc-taiwan.org/jp_ja/post/61357.html

住民投票に持ち込んだのは野党に転落した親中の国民党です。政争の具とするために台湾国民の不安をあおり、住民投票に持ち込み、蔡英文政権に揺さぶりをかけました。住民投票の結果は輸入禁止に賛成が63.60%、反対が36.40%となり、輸入禁止継続が支持されました。また同時に行われた統一地方選挙も民進党は大敗し、蔡英文も党主席辞任に追い込まれました。

やっと緩和の方向へ?

このような経緯をたどり、台湾の輸入規制緩和が進みませんでした。1期目(2016年~)の蔡英文はでもでもだっての大して何もしない人でしたが、2期目(2020年~)は武漢発の新型コロナ対応が評価されているように決断する総統に人格が変わりました。今回の輸入規制緩和の方向に動く発表があったわけです。

親中の国民党や中国がさっそくこれをネタに「台湾の人民を危険にさらしている」と揺さぶりをかけてきていますが、科学的根拠を基に判断していくのか見守りたいところです。

https://japan.focustaiwan.tw/politics/202202080012

https://japan.focustaiwan.tw/politics/202202100002

科学が風評に負けるわけにはいかない

先日お亡くなりになった石原慎太郎元都知事が、築地市場から豊洲市場への移転を拒んでいる小池都知事に対して言った言葉です。正確には中西準子さんの言葉を石原元都知事が引用した場面なのですが、日本人は不安に飛びつくのが好きな国民性です。今回の輸入規制の緩和が科学的根拠に基づく当たり前の判断であると、台湾が日本のお手本になって示してくれればいいなと思う次第です。