食品への異物混入防止対策 手袋編

食品への異物混入防止対策 手袋編

どこの食品工場でも清潔区で製品に触れるときは使い捨ての手袋をはめて、アルコールを手袋に噴霧してから触れていると思います。しかし気づかぬうちに手袋そのものや手袋の破片が入ってしまい、消費者からご指摘を受けることがあります。

手袋の種類

伸び縮みしないビニールの「衛生手袋」と、手にフィットする「ニトリル手袋」があります。

衛生手袋

衛生手袋は破片が入ることはあまりなく、バルク商品などにそのまま入っていることがあります。原因はおそらく置き忘れなどでしょう。

機械のスイッチなどに触れるときなどは手袋を外すように決めているところもあると思います。製品以外に触れるときに手袋を一時的に外すことがあり、ついつい手近なところに置いて、忘れてしまったり別の人が作業に入って気づかなかったりして手袋が混入します。

外したら捨てるルールにする、もしくは外した際に置く場所を決めましょう。

ニトリル手袋

ニトリル手袋は少し傷つくと一気に破損が広がります。竹串や尖った食材を扱う工程ではニトリル手袋ではなく、炊事用のゴム手袋を使うようにしましょう。

破れやすい工程でどうしてもニトリルを使用しないといけない場合は、定期的(30分に1回など)に点検し記録に残します。また、手袋を交換するときは次の点検の時まで破棄せず保管し、破れがないことを見てもらってから廃棄するようにルールを作り、マニュアル化します。

もし破れていた場合は破片が見つかるまで探さなければいけません。破片が見つかったら切断面が同じになること、破片がすべて回収できたことを確認します。自工程で見つからなければ次工程に流れて行っていないか範囲を広げて探しましょう。

各務葉月 著「食品工場の中の人たち」のP49~50にも、「膨らませて責任者に確認してもらってから廃棄する」というニトリル手袋の点検事例が紹介されています。

破損が発見され、破片が見つからなかったときの対処も予めマニュアル化しておきましょう。

ウレタン背抜き手袋(↓写真)をした手で包装工程の食材や食品に直接触れる容器(トレーなど)を触っている工場もありましたが、 個人的には 「そんな手袋で・・・」とカルチャーショックを受けました。

手袋自体が汚染源に・・・

まずは食品工場ですので食品衛生法に適した材質のものを選びましょう。

パウダーフリーの手袋を使う

手袋同士がくっつかないようにするために澱粉を表面に振っている手袋があります。手袋を取り出す際などに付いた水滴で、手袋表面の澱粉をエサにして微生物が繁殖することがあります。

加熱前の工程ならさほど気にしなくても良いでしょうが、後に加熱がない工程では注意が必要です。手袋をはめた後にアルコール噴霧などで作業者全員もれなく十分に消毒していれば良いのですが、パウダーフリーを使った方が確実で安心だと思います。

手袋をしないと・・・

2017年に学校給食で発生した集団ノロ感染は、刻み海苔加工業者が素手で作業をしてノロで汚染されたのが原因でした。手洗いもしていないか、していても不十分だったのでしょうね。

白い食品だと異物が目立つのでお申し出も多いように感じます。帽子もかぶっていなかったそうですが、黒い食品だとお申し出も少なくなる傾向にあるので管理がルーズになりやすいのかもしれません。お申し出がないからと言って安心せず、一般的な食品工場の管理レベルはクリアできるように管理した方が良いでしょう。

手袋をするのに手を洗う意味

手には菌が付いています。その菌は常在菌と通過菌に分けられます。いろんなものを触った結果、手に付着したのが通過菌です。

手洗いをしっかりすれば通過菌を落とすことができるので、手洗い直後の手は結構きれいです。しかし時間と共に常在菌が増えてくるので、手袋をして製品の汚染を防ぎます。常在菌は手洗いでは落としきれません。詳しくは下記のサイトがわかりやすいと思います。

https://www.thcu.ac.jp/research/column/detail.html?id=110

ノロウイルス入りの便がトイレでどこまで飛び散るか

ノロなどの食中毒感染者が水溶性の便をするとどうなるのか実験された結果が公開されていました。視覚的に非常にわかりやすいです。トイレの後に手洗いをしっかりしないといけない意味が伝わりやすい実験だと思います。

トイレを起点とするノロウイルス汚染拡大の検証
長野県北信保健福祉事務所

軍手

食品に手の微生物を移さないためにする手袋ではなく、熱などから手を保護する目的で手袋を使っている工程もあります。

糸の異物混入には注意をしていて、軍手はほつれてきたら交換していると思います。

ゴムでコーティングしている軍手を使っている工程では、ほつれ以外にも注意しなければなりません。ゴムが劣化してくるとポロポロと剥がれてくるので、ゴムの劣化にも注意を払ってください。

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