食品工場の一般的な毛髪混入防止対策
- 2019.04.10
- 毛髪混入防止対策
毛髪混入対策をしていない食品メーカー、食品工場は無いでしょう。減らしたいと思って対策をやっているのになぜか発生してしまうのが毛髪混入です。
目次
毛髪混入防止の基本と言われている対策
食品メーカー、食品工場で実施している基本的な毛髪混入防止対策は、こんな感じではないでしょうか?
- 食品工場用の作業服を着用する。
- 作業服の開きはボタン留めではなくファスナーにする。
- 袖口とズボンの裾に絞りを入れ中から体毛が落ちないようにする。
- 帽子は頭巾帽にする。
- 帽子の下にはヘアネットを着用する。
- 毛髪がはみ出さないように着用する。
- 身だしなみチェックをする。
- エアシャワーを通ってから作業場に入る。
- 粘着ローラーをかける。
- 当番を決めて作業中にローラーをかけて回る。
- エアシャワーに粘着シートを貼る。
- 粘着マットを設置する。
- 入口に写真(イラスト)付き粘着ローラーがけマニュアルを掲示する。
食品工場用の作業服
作業帽、作業服でほぼ全身を覆うことで中から毛髪や体毛を落とさないことが大切です。そのためにも食品工場に適した形の作業服を選定することが重要です。
エアシャワー
エアシャワーの効果は作業服の材質により変わります。半導体工場などの作業服なら効果があるらしいです。食品工場の作業服ではどうなるのでしょうか?
作業服に毛髪を付けてエアシャワーに入ってみましたが、生地と接している部分の毛髪は飛んでいきませんでした。毛髪の代わりに糸を作業服に付着させてエアシャワーに入り、何本減ったか検証する動画を見たことがあります。しかし毛髪と糸で同じ結果が出るのか疑問が残ります。毛髪では飛んでいかなかったから髪の毛より空気抵抗が大きい糸で動画を作ったんじゃないのかとちょっと疑っています。知らんけど・・・
かといって、毛髪が飛びやすいツルツルの材質にすると粘着ローラーがベタ~ッとくっついてしまうのでローラーがけがしにくくなるそうです。こうなるとローラーがけが雑になってしまい逆に毛髪混入が増えた事例もあるとか・・・ (一緒に登壇した別の講師の方が紹介されていました。)
個人的にはエアシャワーは監査員の印象を良くするための「見た目の衛生のインテリア」だと思っています。あと総合衛生管理製造過程が始まった頃はゼネコン不況と重なっていたので、「設備を入れることがHACCPの第一歩」といった風潮の名残のようにも思います。実際は設置されていようがいまいが、毛髪混入にはほぼ影響がない設備でしょう。
ただ「エアシャワー = 前室」と見ると虫の侵入経路遮断には効果があるかも知れません。空気が出ている意味はほぼないような・・・
毛髪混入クレームを出す度に増える対策
毛髪混入クレームを出してしまって何らかの対策を取らなければならなくなり、対策がどんどん増えていき、ルールだらけになっていませんか?
報告書に書いて流通に出してしまったので、やめるにやめられない。他にどうすれば良いかわからないので、なんとなく続けてやっていると言ったところでしょうか。あれもこれもやっておかないと、ここでもあそこでもやらねばと増えていった対策の効果は実感できていますか?
- チェック強化系
- 箱詰め前に異物目視検査工程を入れる。またはチェックする担当者の人数や回数を増やす。
- 粘着ローラー(コロコロ)がけをちゃんとしたら○をつける「自己チェック記録表」を導入する。
- 回数増やす系
- 粘着ローラーがけのタイマーの時間を伸ばす。
- 例 30秒 → 60秒
- 作業中の粘着ローラーがけの回数を増やす。
- 例 2時間に1回 → 30分に1回
- 作業場にたどり着くまでの粘着ローラーがけの箇所を増やす。
- 例 1カ所でだけかけていたが、2カ所に増やす。
- 粘着ローラーがけのタイマーの時間を伸ばす。
- 設備投資系
- 静電気で毛髪を落としにくくするちょっとお高いヘアネットに変更。
- くぐると静電気を取り除く紐を取り付ける。
- 監視カメラを導入する。
チェック増やす系対策
検品工程はずっと続けることができれば良いのですが、今まで検品者を置いていなくても問題無かったので1ヶ月位すると元に戻ることが多いでしょう。結局は一時的なパフォーマンスに終わることが多い対策です。金属検知機とは違い目視検品ではそもそも商品の表面しか検品できないので、あまり効果は期待できません。
自己チェック記録表はあくまで自己判定です。自分で自分の粘着ローラー(コロコロ)がけができていないと思っている人はいないので、「×」が付くことはありません。○を書くお習字の練習用紙になってしまっています。○を上手に書けるようになったところで毛髪混入は減りません。
回数増やす系対策
タイマーで粘着ローラー(コロコロ)がけの時間を管理しているところもあります。流通系の監査員には非常に受けが良いので、この点はお勧めです。タイマーが設置されいて、粘着ローラーがけマニュアルが掲示してあって、エアシャワーがあれば、「この工場は毛髪対策ができているから◎」と判断してくれます。
しかしほとんどの作業者はタイマーが鳴るまで「同じところを何度もかけるだけ」で、隙間なく全身にくまなくかける人はあまりいないでしょう。そもそも30秒や60秒で全身に粘着ローラーをかけることはできません。
作業中の粘着ローラーがけの回数も同様です。当番は背中にしかかけないでしょうし、当番が回る前に作業服に付着している毛髪が落下して商品に混入していたら意味がありません。
粘着ローラーがけの関所を増やすのも同様です。粘着ローラーがけの仕方は筆跡と同じです。その人はその人の癖で毎回同じようなところしか転がしていません。関所を増やしても再び同じところを同じように転がすだけです。関所を増やしてもかけ残しを埋めることはできません。
設備投資系対策
金で解決の設備投資系対策は品証にとって非常に助かる対策です。報告書を作成しなければいけないけど対策がネタ切れの時は、のどから手が出るほど頼りたくなる対策です。しかしその対策が本当に効果があるのか見極めなければなりません。
特に監視カメラはフードディフェンスの面からも導入するところが増えてきました。やる気のある品証は監視カメラで粘着ローラーがけの様子をチェックして、できていない作業者の動画を切り取って「職場責任者からこの作業者に指導してください」と各職場に切り取った動画ファイルを配布したりします。
しかし実際は製造の職場リーダーが指導対象の作業者に対して「品証が見とるんやから気ぃつけろよ」「録画されとるんやからちゃんとせなあかんぞ」と一言注意して終わりにしてしまうことが多いものです。
渡された録画を確認することもまれですし、その動画ファイルを指導対象者と一緒に見て、「この部分のかけ方が良くないのわかるかな? この部位はこんな風に転がすんやで」と丁寧に指導することはほぼありません。これではせっかくの監視カメラや動画編集の努力も無駄になってしまいます。
せめて品証と職場リーダーが同席して編集動画を確認できれば良いのですが、忙しいとかいろいろ理由を付けて逃げられてしまうのが大体のパターンです。
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
- 食品への異物混入苦情件
やっぱり食品のクレームで一番多いのは毛髪混入でしょうと言う話 - 食品への毛髪混入と報告書
報告書を書いたら全部終わった気になって、結局何の対策もしていなかったと言う反省 - 食品工場の一般的な毛髪混入防止対策 ←今ココ
どこの食品工場でもやっていそうな普通の毛髪混入防止対策 - 食品工場が取り組んでいる更なる毛髪混入防止対策
食品業界では推奨されているけど、大して効果がなさそうな毛髪混入防止対策 - 食品への毛髪混入経路
作業服の中から落ちてくるのではなくて、作業服に付着した抜け毛が原因じゃないの?と言う話 - 食品への毛髪混入を防止するための粘着ローラー(コロコロ)
やっぱり粘着ローラー(コロコロ)がけが一番だよね~ と言う話 - 食品工場に於ける粘着ローラー(コロコロ)がけの重要度
毛髪を危害要因と考えたらどこをCCPに設定するか? 的な話 - 食品工場に於ける正しい粘着ローラー(コロコロ)がけとは?
とりあえず自分の職場の現状把握をしてみましょうと言う話 - 毛髪混入を防止する正しい粘着ローラーがけ(コロコロ)の手順
時間をかけて、地道に、着実に対策していかないと毛髪混入は減らせないよ〜 という話 - 食品への毛髪混入対策の検証
クレーム件数による検証も必要だけど、まずは決められた対策を全員が確実に実施しているかを検証したほうがいいよ~ という話 - 食品への毛髪混入を防ぐ粘着ローラー(コロコロ)がけの教え方ポイント
教え方のコツ - 食品工場での新人教育 毛髪混入対策編
ここだけは入社初日に教えたほうがいいと思うポイント - 二人で行う粘着ローラー(コロコロ)がけ
相対で行う場合の注意点 - 食品工場に設置すべき粘着ローラー(コロコロ)の本数は?
粘着ローラー(コロコロ)がけのスペースと本数の話 - 毛髪混入防止対策に効果的な粘着ローラー(コロコロ)の形状は?
粘着ローラー(コロコロ)のハードについての考察 - 食品工場入口で粘着ローラー(コロコロ)がけにかかる時間
タイマーで管理している食品工場は毛髪混入が減らない言う話 - 粘着ローラー(コロコロ)がけの撮影方法
現状把握のための録画するときのポイント - その他
毛髪関連カテゴリーの記事一覧 - 毛髪混入が前年比21%にまで減少した粘着ローラー(コロコロ)がけ動画マニュアル & オンラインセミナー
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