食品への毛髪混入と報告書

食品への毛髪混入と報告書

様々な対策を立てているのになかなか毛髪混入が止まらないのはなぜなのでしょうか。それは体裁を整えるための対策に終始しているからかも知れません。

前の記事で加工食品の苦情で一番多いのは異物混入、中でも毛髪が多いと推察しました。(容器への充填直前でメッシュを通す液体や粉体、人手がほとんどかからない装置産業などはこの限りではないでしょう。)

少なくともこのページを検索で見つけてくださった食品メーカーの方は毛髪混入にお困りで、なんとかしたいとお考えのことと思います。

報告書のための対策と品質保証マインド

お申し出があると原因を究明し、対策を立て、消費者や流通、ときには行政に対し報告書を提出しなければなりません。

報告書の提出は期限が伴います。いつまでも置いておくわけにはいきません。

他の業務もやらないといけないし、製造に調査対策を依頼しても「あー そのときはなんかあったんやろ 気ぃつけるよう言うとくわ」で具体的にどうなのかよくわからず、営業からは「報告書まだ?」との矢の催促。こんな状況で苦し紛れにそれらしい対策を書いた報告書を営業に持たせることもよくある話ではないでしょうか?

破損個所と破片がピタッと一致する硬質異物などは原因を確定させることもできますが、毛髪などはいつどこの工程でどのようにして入ったのか特定することはまず不可能です。よって原因は推定することしかできません。

しかも毛髪は人体に危害が発生するような異物ではないので、手抜きの報告書になりがちです。私も品証時代は毛髪クレームの報告書は毎回コピペで作っていました。毎月何件か発生しますが、同じ流通で続けて発生することは稀なので使い回ししていました。

たしかに消費者や流通に対して早い対応をすることは大切です。時にはスケープゴートの原因を作り出して、報告書の体裁を整えないと収まりがつかないこともあります。

本当の原因をつかまなければ再発するのはわかっているのですが、私の場合は印刷した報告書を営業に渡せば仕事が終わった気になってしまい、しばらくして再びクレームが発生すると同じことの繰り返しでした。

製造現場の対策の現状

製造も製造で毛髪クレームが出たところで「みんな気をつけるように」と職場朝礼などで訓示するだけで終わっているのがほとんどではないでしょうか?

「再度従来のルールを確認し、課員に周知しました。」と言うような文言が社内で発行した対策書には書かれ、製造から返ってくるのです。

しかしこれで再発防止ができるのでしょうか?

かと言って、精神論以外に具体的対策が思いつくわけでもなく、なんでもいいから今まで以上の対策を立てるように言ったところで「ほんならどないせいちゅうねん!」と製造部門から返されるのがオチでしょう。

その心の内はこんな感じかも知れません。

  • よく言われている対策はやっているけど、正直なところもうこれ以上対策をやれと言われても・・・
  • 帽子の下にはいっぱい生えている状態で工場に持ち込んでいるんだから、毛髪クレームゼロなんてぶっちゃけ無理だと思う。
  • 食べても死ぬわけじゃないし、ある程度は仕方ない
  • 箱詰めの時しっかり検品するしかない。
  • 髪の毛くらいでいちいち目くじら立てないでほしい。
  • (開封してそのまま食べる食品ではないから)消費者のところで入ったんじゃないの?

自分自身は対策はやっているつもり。これほどやっているのに毛髪クレームが出るのが不思議でたまらない。なんなら消費者のところで入ったんじゃないの?、と言ったところでしょうか。

こういう感じで品証と製造が悪い意味でのもちつもたれつ関係に陥り、表面的な対策がいっぱいできていくわけです。手間は増えるけど効果があるのかよくわからない対策ばかりになっていませんか? まぁ昔からやっているから~、流通さんに言われたから~、と言った感じで効果の検証無く続けていることはありませんか?

得意先に提出する報告書には「お申し出を受け、即効性のある対策を実施済みです。」と書いて、今店頭に並んでいる商品は絶対大丈夫ですよ~みたいな感じに仕上げないといけないと上司から言われているかも知れません。

でも毛髪混入対策に特効薬はありません。1日でできる対策はなく、数ヶ月かけて対策しないと効果が出ないものです。報告書に追われる毎日かも知れませんが、ここはじっくり毛髪混入対策をしてみませんか?

毛髪混入防止対策の記事一覧

番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。

  1. 食品への異物混入苦情件
    やっぱり食品のクレームで一番多いのは毛髪混入でしょうと言う話
  2. 食品への毛髪混入と報告書 ←今ココ
    報告書を書いたら全部終わった気になって、結局何の対策もしていなかったと言う反省
  3. 食品工場の一般的な毛髪混入防止対策
    どこの食品工場でもやっていそうな普通の毛髪混入防止対策
  4. 食品工場が取り組んでいる更なる毛髪混入防止対策
    食品業界では推奨されているけど、大して効果がなさそうな毛髪混入防止対策
  5. 食品への毛髪混入経路
    作業服の中から落ちてくるのではなくて、作業服に付着した抜け毛が原因じゃないの?と言う話
  6. 食品への毛髪混入を防止するための粘着ローラー(コロコロ)
    やっぱり粘着ローラー(コロコロ)がけが一番だよね~ と言う話
  7. 食品工場に於ける粘着ローラー(コロコロ)がけの重要度
    毛髪を危害要因と考えたらどこをCCPに設定するか? 的な話
  8. 食品工場に於ける正しい粘着ローラー(コロコロ)がけとは?
    とりあえず自分の職場の現状把握をしてみましょうと言う話
  9. 毛髪混入を防止する正しい粘着ローラーがけ(コロコロ)の手順
    時間をかけて、地道に、着実に対策していかないと毛髪混入は減らせないよ〜 という話
  10. 食品への毛髪混入対策の検証
    クレーム件数による検証も必要だけど、まずは決められた対策を全員が確実に実施しているかを検証したほうがいいよ~ という話
  11. 食品への毛髪混入を防ぐ粘着ローラー(コロコロ)がけの教え方ポイント
    教え方のコツ
  12. 食品工場での新人教育 毛髪混入対策編
    ここだけは入社初日に教えたほうがいいと思うポイント
  13. 二人で行う粘着ローラー(コロコロ)がけ
    相対で行う場合の注意点
  14. 食品工場に設置すべき粘着ローラー(コロコロ)の本数は?
    粘着ローラー(コロコロ)がけのスペースと本数の話
  15. 毛髪混入防止対策に効果的な粘着ローラー(コロコロ)の形状は?
    粘着ローラー(コロコロ)のハードについての考察
  16. 食品工場入口で粘着ローラー(コロコロ)がけにかかる時間
    タイマーで管理している食品工場は毛髪混入が減らない言う話
  17. 粘着ローラー(コロコロ)がけの撮影方法
    現状把握のための録画するときのポイント
  18. その他
    毛髪関連カテゴリーの記事一覧
  19. 毛髪混入が前年比21%にまで減少した粘着ローラー(コロコロ)がけ動画マニュアル & オンラインセミナー
    動画マニュアルの内容と動画マニュアル付きオンラインセミナーのご案内