食品製造ラインの床の落下毛髪モニタリング調査は効果的か?
- 2019.05.16
- 毛髪混入防止対策
以前の記事で「作業場の床掃除をして抜け毛が舞い上がらないようにする」という対策を推奨しているところもあると書きました。対策ではなくモニタリング調査として床の落下毛髪を定期的にコロコロカーペットで採取している工場もあるようです。床の落下毛髪の本数をカウントすることは、毛髪混入対策にとって効果的な方法でしょうか?
目次
落下毛髪による検証
検証は非常に大切です。そして何を以て検証とするかも大切なことです。床の落下毛髪を調査することによって対策の効果を検証することも一つの手でしょうが、果たして効果的な検証方法なのでしょうか。
現状行っている毛髪混入対策
落下毛髪の本数や分布を検証することで、何が見えてくるでしょうか?
現状行っている毛髪混入対策が有効であるかを確認するために、落下毛髪の本数調査によって検証を行おうとしていると思います。その検証の結果から、「どの」毛髪混入防止対策を、「どのように」見直すかシミュレーションすることができるでしょうか?
落下毛髪から得たデータで何をするか
調査して床の落下毛髪の本数や分布がわかったらどんな対策を打つでしょうか?
- その作業場にいる人に対して注意を促す。
- その作業場にいる人がどういう服装か調べる。
- その作業場に入る作業動線を確認する。
と言ったところかと思います。しかしこれらの対策は落下毛髪を調べたからこそ打ち出せた対策ではないはずです。
得られた数値データを元にその作業場の作業者に対して「気をつけろ」「頑張れ」と言えば、動機付けにはなるでしょうし、少しは毛髪混入が減るかも知れません。しかし減ったとしてもあくまで作業者個人のがんばりに頼っている精神論になってしまいます。
経費を使って調査した結果が出たら、「今まで以上の新たな対策しなさい!」と上から指示されることもあります。例えばやむにやまれず「帽子着用前にブラッシングする」ルールを新たに設定 → 次回の調査でルール設定前と後の落下毛髪の本数を比較、となります。
調査の結果、落下毛髪の本数が変わっていなかったり増えていたりしたら「帽子着用前にブラッシングする」と言うルールをやめる、やめずに新たなルールを設定するなどが考えられます。しかし実際は一度作ったルールはなかなかやめられないでしょう。
仮に本数が減っていたとしても明らかに減っていなければ、さらなる追加の対策をしてルールがどんどん増えていくことでしょう。
調査の結果、増えても減っても、新たなルールが追加されライン作業者の負担が増えていくばかりになってしまいます。また、たいして減らなければ再調査が続きますので経費もどんどんかさんでいきます。
抜け毛は増えない
1本の抜け毛が床に落ちてから2本以上に増殖するなら歩行昆虫の粘着トラップの要領で、落下毛髪の本数調査で得たデータは活用できるでしょう。
しかし虫と違って毛髪は抜けた後には増えません。床の落下毛髪を調査しても、そこに何本落ちているかはわかりますが、「なぜそこにこれだけの本数の毛髪が落ちていたのか?」は落下毛髪調査だけでは判明しません。直接の原因が何であるかつかむことが出来ないのです。落下毛髪調査で得られる費用対効果はあまりオススメできるものではないと私は考えます。
大切なのは製造ラインに抜け毛を持ち込まないこと
製造ラインにまで抜け毛を持ち込んでいるから消費者からお申し出があるわけです。工場としてもこれをなんとかしないといけないと考えているわけであり、そのためにわらにもすがる思いで落下毛髪調査に経費を使おうかと検討しているのではないでしょうか?
しかし毛髪混入クレームが多発している時点で、落下毛髪は作業場にそれなりにあると推察されます。
やはりどこにどれだけ抜け毛が落ちているかを知るより、抜け毛が製造ラインにまで持ち込まれた原因を調べることに注力した方が効果的だと思います。
製造ラインまで毛髪を持ち込む原因経路についてはこちらとこちらのページで考察しました。床を調べるより工場入口で作業者の入場の様子を調べたほうが、はるかに早く効果的な毛髪混入防止策の次の手を打てます。
落下毛髪調査にコストをかけようか検討されているところは、まず入口の様子を観察してみてはいかがでしょうか?
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
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