食品工場での新人教育 毛髪混入対策編
- 2019.04.21
- 毛髪混入防止対策
だれにでも新人時代はありますが、新人初日にどこまで毛髪混入対策を教えれば良いのでしょうか?
新入社員やパート、アルバイト、派遣社員が製造ラインに入ってもらうまでに、食品衛生や労働安全の教育をしていると思います。場合によっては製造以外から人事異動してきた社員にも教育をしていることでしょう。
毛髪混入は粘着ローラーがけが不十分なことが原因で起きていると推察してきました。全てのことに不慣れな新人こそ、毛髪混入を発生させやすい状態であると言えます。
しかしたくさん教えても覚えきれないので、ポイントを絞る必要があります。初日に最低限教えた方が良い「粘着ローラーがけ」のポイントはどういったものでしょうか?
目次
新人教育の担当部署が分かれている場合の落とし穴
最初から配属先の製造の部署が教育するのではなく、初日の新人教育を製造以外の部署(人事、総務、品証など)が一通り簡単に説明している工場の場合です。
工場によってはうまく連携が取れておらず、人事などの新人教育担当部署と配属先の製造でギャップが生まれる場合があります。
新人教育担当部署は最初に最低限の教育を実施しています。それ以上の細かい部分は配属先の製造で追々教えていくことになっていることでしょう。
しかし新人教育の範囲が曖昧だったり、長年やっているうちに少しずつ省略されて内容が変わってしまっていたり、教える人によって教える範囲が異なっていたりすることがあります。すると製造が想定している「新人はここまで教えられているはず」と、新人教育担当部署が思っている「新人にはここまで教えておけばOK」にズレが生じてしまいます。
その結果、新人が知らない空白の部分ができてしまいます。知らないことで起きてしまう失敗もあるでしょう。
それ以上に問題なのはついカッとなってしまい、その失敗について新人を責めてしまうことです。血の気の多いたたき上げの人を製造の責任者にしている工場も多いことでしょう。そういう人はついつい言ってしまうのです。
責任者にとっては過去に何度も誰かがやらかした良くある失敗であっても、新人にとっては不慣れな環境の中でやらかしてしまい「自分のせいで・・・」と自責の念に駆られています。
このような精神状態の時に責められると新人はかなり傷つきます。各務葉月 著「食品工場の中の人たち」P67に新人の失敗エピソードが載っているので参考にしてみてください。
このようなギャップを生まないためには、下記をそろえましょう。
- 教育のテキスト
- 教育記録
- 教育効果の検証記録
教育のテキスト
文書化したテキストを用意しましょう。そして製造と「どこまで新人教育で教えているか」を共有します。
ただ、教育で文書を読み上げるだけでは頭に入ってこないので、その内容を写真付きの掲示物などにし、それを使って内容説明します。パワーポイントや動画にしているところもありました。
教育記録
教育したことを記録に残すことが必要です。記録には下記項目を盛り込みましょう。
- 教育に使ったテキスト
- 教育日
- 教えた人のサイン
- 教えられた人のサイン
- 承認者のサイン(記録のダブルチェック)
このほかにも必要事項があれば付け加え、ファイリングします。記録の保存期間も決めておきましょう。
教育効果の検証記録
教育したままほったらかしではいけません。本当に理解できたか、理解してできるようになったかの検証が必要です。
上記の教育記録の横に下記項目を設けても良いでしょう。
- 検証者のサイン
- 検証日
- 判定
- 不適合の時の不適合コメント
不適合の時は再教育して、再度検証となります。適合になるまで繰り返します。
新人教育以外にも使えますので、参考にしてみてください。
新人に初日に教えるべき粘着ローラーがけのポイント
粘着ローラーがけを1日で全部教えることはボリュームが多すぎて無理です。かといって全く教えないというのも困ります。
ではどこを細かく教えれば良いでしょうか? いろいろな工場を見てきた経験から、初日に新人へ教えたほうがいいおすすめポイントは次の点です。
- 上から順にかける
- 帽子の周囲
- 首回り
- 肘から先
上から順にかける
かける順番を教えましょう。上から順番にかけるのが基本です。下をかけてから上の部位をかけて、折角粘着ローラーを転がした部位に上から毛髪が落下してきては意味がありません。
帽子の周囲
マスクをかけるための耳かけが付いている帽子によくあるパターンです。耳かけに粘着ローラーが当たると下までかけたつもりになるようです。意識して耳かけより下にも粘着ローラーを転がすようにしなければなりません。
首回り
首はへこんでいるので、粘着ローラーを勢いよく転がすと凹みに粘着ローラーが当たりません。凹みに当たるように意識して粘着ローラーを転がしましょう。
肘から先
マジンガーZのロケットパンチの部分です。肩から肘まではかけるのですが、肘から先は転がさないない人が多いです。袖口まで粘着ローラーを転がすには、意識して転がさないとなかなか難しいようです。
袖先は食品に一番近い部分です。ここに抜け毛を付着させたまま製造ラインに入ると、食品への毛髪混入が起きやすい非常に危険な状態であることがわかると思います。
ある原料の工場では、作業者が作業場に入ってきたらリーダーが袖先を粘着ローラーがけするようにしました。すると毛髪混入がかなり減ったことがあります。
また加熱工程があり、かなり暑い工場では半袖の作業服で働いています。そこの工場責任者の方は「毛髪混入って他の工場ではそんなに困っているのですか? うちではほとんど出ないのですが・・・」と驚いておられました。工場に入る前に肘まで手洗いをしているので肘から先に抜け毛の付着がなく、毛髪混入が起きにくいのかも知れません。
流通からは「腕毛の混入を防ぐ処置」を求められます。その結果、長袖の作業服以外あり得ない雰囲気もあります。
半袖に今更替えることは難しいかも知れません。もし半袖にしてどれだけ毛髪混入が減るか実験された工場がありましたら、ぜひその結果を教えてください。
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
- 食品への異物混入苦情件
やっぱり食品のクレームで一番多いのは毛髪混入でしょうと言う話 - 食品への毛髪混入と報告書
報告書を書いたら全部終わった気になって、結局何の対策もしていなかったと言う反省 - 食品工場の一般的な毛髪混入防止対策
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ここだけは入社初日に教えたほうがいいと思うポイント - 二人で行う粘着ローラー(コロコロ)がけ
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