毛髪混入対策をすると工場の雰囲気が変わる
- 2019.04.28
- 毛髪混入防止対策
私が提唱する毛髪混入対策はお金はかかりませんが、手間と根気と時間がかかります。しかし毛髪混入は確実に削減できますし、工場の雰囲気までプラスの方向に変わってきます。
包装不良や日付間違い、重量過不足、形状不良など特定の工程で対策する課題と異なり、毛髪混入は工場の製造全体で取り組まないといけない課題です。
毛髪混入対策として工場全体に正しい粘着ローラーがけを教えていくと、毛髪混入が止まります。製造のみんなで取り組んだことが結果として表れてきます。
すると「やったらできるんや」という自信を製造のみんなが持ち始めます。「自分たちがこの工場の品質を守っている」と言う意識が製造担当者全員にできてくるので、正のスパイラルが回り始めます。
新しいことへの反発
正しい粘着ローラーがけを教え始めると反発する勢力も出てきます。
「今までこれでよかったのに」、「前に働いていた工場ではこんなことやらされなかった」、「私はちゃんとできているのになんで言われなあかんねん」、「私に言うより○○さんとかにちゃんとやらせたらええねん」などなど、特にベテランのパートのおばちゃんグループに多いようです。
ある工場では反対意見が来る度に「今はそういう時代じゃないんですよ。他の食品会社ではここまでやっているのですから、我々も本来やっとかんとあかんかったことなのです。今までが甘すぎたのです。」と相手がわかるまで諭していたそうです。そこのリーダーは非常におおらかな方なので、まわりの意見をいつもよく聞く人でもあったのだと思います。反対意見を言いに来た人たちも「いつもは話を聞いて尊重してくれるのに、今回はなんだか違う。」と思ったことでしょう。
新しいことを始める時のリーダーはつらいと思います。本当に結果が出るか半信半疑の状態で、わらにもすがる思いで「こないしたらええらしい」と聞いたことを実施しているのですから。
集団が悪い方向に変わる時もごく一部の勢力が発端になります。逆に良い方向に変わる時もそれは同じで、一部の人がスターターになります。耳に入ってくるのは反発の言葉ばかりになりがちですが、素直にリーダーのことを信じて付いてきてくれている人たちを忘れないでください。ここがリーダーの踏ん張りどころなのです。
自分を信じて突き進んでいると、傍観グループも次第に付いてきてくれている人たちに変わっていきます。すると反発勢力が少数派に転落します。ここまで来れば、反発は怖くなくなっているはずです。何が何でもやり抜く意志の強さがリーダーに求められます。
問題児への対応
入口での粘着ローラーがけの様子を録画すると問題点が見つかる作業者がいます。その工場では片付けの時間にリーダーが対象者を一人ずつ会議室に呼んで、個別に正しい粘着ローラーがけの補習をしていました。
すると毎月1回、入口での粘着ローラーがけの様子を録画する度に、一人、また一人と補習に呼ばれる人は減っていきました。しかし毎回問題点が見つかり、毎回呼ばれる人がいました。
その問題のある作業者はおっちょこちょいとのことでしたので、私たちはサザエさんと呼ぶようになりました。「今回もサザエさんダメですね・・・」、「またサザエ。あんだけ言うてんのに!」という具合に。
その工場のリーダーはとても温厚な方なのですが、とうとうある時ブチ切れてかなりきつく叱ったそうですが、サザエさんは「私はちゃんとやっている!」と反論し、粘着ローラーのかけ方に変化はありませんでした。
粘着ローラーがけの様子を録画すると、「問題あり → 個人指導が必要」と判断される人が毎回数人いるのですが、とうとうサザエさんだけになりました。それでもサザエさんは「私はちゃんとやっている!」と言って、ちゃんとローラーがけはしてくれませんでした。
しかし周りの人は、入口で録画した後に会議室に呼び出される人がどういう人か気づいています。それがだんだんサザエさんにもわかってきたようでした。
するとサザエさんはある時リーダーのところに来て「私に粘着ローラーがけの仕方を教えてください。私もみんなのようにちゃんとかけられるようになりたいのです。」と頭を下げたそうです。
リーダーは「自分では教えられたとおりちゃんとしているつもりなのに、できていないと言われて、上手にできない自分自身にいらだっていたんだとその時に初めて気づきました。もっと早くに気づいてやればよかったのですが・・・」とおっしゃっていました。
表面では反発しているように見えても、その裏では自分一人で悩んでいることもあるのかも知れません。リーダーの方は表面的な言葉に惑わされず、何があっても全ての部下を育てる覚悟を持って接してあげてほしいなぁと個人的に思う出来事でした。
その後、サザエさんの特訓が始まりました。しばらくすると他の作業者と同じレベルで粘着ローラーがけができるようになり、録画チェックでも引っかかることはなくなりました。
粘着ローラーがけにかかる時間
上図のような手洗い用のタイマーを粘着ローラーがけの場所にも設置している工場もありますが、粘着ローラーがけを時間でコントロールしても意味がありません。全身にざっと我流で粘着ローラーを転がした後、タイマーを見ながら同じ場所ばかり転がして、タイマーが鳴るのを待っているだけだからです。
そもそも30秒でかけられる範囲というのはせいぜい帽子までです。全身に正しく粘着ローラーがけしようと思ったら最低でも90秒はかかります。
だからといって90秒のタイマーを設置しても意味がありません。正しく粘着ローラーがけした結果、90秒以上かかると言うことです。時間ではなく、かけ方でコントロールしなければいけません。
毛髪混入を撲滅した工場では正しい粘着ローラーがけを教えた結果、1人当たり2分~2分30秒かけるようになりました。その工場のリーダーが録画確認で「こいつ今日の終わりに呼んで指導しますわ。えっらいかけかた粗いなぁ。」とマークした作業者は1分05秒しかかけていませんでした。
ちゃんと粘着ローラーがけをしたら2分前後はかかりますし、みんなができるようになると「2分かかるかけ方」が当たり前に見えるようになります。
30秒や1分では毛髪混入は防止できませんし、時間でコントロールすることもナンセンスです。とても根気と手間と時間がかかりますが、正しい粘着ローラーがけの手順を教育していくことが毛髪混入対策の一番の近道と考えます。
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
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- 食品への毛髪混入と報告書
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- 食品工場が取り組んでいる更なる毛髪混入防止対策
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- 食品工場入口で粘着ローラー(コロコロ)がけにかかる時間
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