食品への毛髪混入経路
- 2019.04.12
- 毛髪混入防止対策
食品工場に於いて毛髪は一体どのような経路を経て食品に混入しているのでしょうか?
前回までの記事では、どこの食品メーカーでも取り組んでいる毛髪混入防止対策についてまとめてきました。
どんな問題であっても対策を立てるためには原因の特定と究明が必要です。しかし毛髪混入防止対策については原因を特定することが困難なので原因究明もおざなりになりがちです。
毛髪混入についても「混入経路の仮説」を立てることで、それに沿った対策を立てることができるようになります。
目次
毛髪混入経路の特定
では原因は何かというと「製造ラインのところまで毛髪を持ち込んでいる」ということです。どうやって製造ラインまで毛髪を持ち込んでいるかというと下記のあたりが考えられます。
- 作業中に毛髪が作業服の中から出てきて、製品中に落下させた。
- 作業服に抜け毛を付着させたままラインに入り、製品中に落下させた。
- 元々原料に毛髪が混入していた。
- 原料の外容器(段ボール箱、紙袋、一斗缶など)に毛髪が付着していて、容器とともにそのまま工場内に持ち込まれた。
- 製造以外の人(工事関係者、製造機械などの業者、事務職スタッフなど)に食品工場に適した身なりをさせていない。
- 例えば帽子をかぶっていなかったり、帽子をかぶっていても普通の野球帽
- 正規のルートで入らず搬入口や出荷ヤードからそのまま製造ラインに入っている。
作業服の中から毛髪が出てきて落下
作業中に作業服から毛髪が出てくることに関しては、食品工場に適切な作業服の選定、正しい作業服の着用などが対策になります。また破損した作業服(ゴムが伸びた、穴が空いたなど)の修理ルートを明確にすることで、不適切な作業服の着用を防ぎます。
作業服に抜け毛を付着させて持ち込む
作業服に付着している毛髪は粘着ローラーで取り除きます。
原料に毛髪が混入
原料由来は特定の製品でお申し出が続くので推察しやすいと思います。これについては原料メーカーに改善を入れる、代替メーカーに変更する、自社で選別してから使う、などの対策が考えられます。
原料容器に毛髪が付着
原料容器への付着は搬入業者に対し搬入時のネット着用、工場内で開梱開封時の点検が対策になるでしょう。
製造以外の人の入場
製造以外の人に関してはルールを明文化し、遵守させます。
いくら社内でルールを文書化していても外部業者からすれば知る由も無いので、業者を呼ぶ部署を巻き込まなければなりません。業者を呼ぶときは事前に連絡をもらい、入場のための服や帽子、長靴などを用意できるようにします。
アスクルやモノタロウで「使い捨て防塵服」「使い捨て保護服」などで検索すれば安いつなぎ服が出てきますので参考にしてください。ただフードは視界が悪くなるので、労働安全上、製造作業者と同じタイプの帽子を用意した方がいいでしょう。また正規の工場入口以外からしか入ることができない場合もあります。その場合は、他の入口にも粘着ローラーを設置します。
一番クレームの原因になりそうなのは?
元々原料に毛髪が混入している場合は原料の変更で止まります。原料の外容器に付着している場合は開梱室を設け、内袋だけ持ち込むなどで防げますので割と簡単です。食品メーカー側が客の立場ですので業者へのルールの徹底も素直に受け入れてもらえるはずです。
製造工程において毛髪混入原因になりやすいのは、
・ 作業中に毛髪が作業服の中から出てきて、製品中に落下させた。
・ 作業服に抜け毛を付着させたままラインに入り、製品中に落下させた。
のいずれかであろうと考えられます。
私が入社した頃は作業服の着用もいい加減、洗濯でゴムが伸びた帽子をかぶっている人もいる時代でした。しかし今はきっちり作業服を着用していることがほとんどです。だいたい毛髪がはみ出ていたところで、それが抜けるとは限りません。毛根が頭皮にしっかりくっついていればクレームの原因にはなりません。
ただ、はみ出したまま誰も注意しない職場は意識が低いのである意味問題がある職場と言えます。「髪の毛、帽子から出てきてるで」「ありがとう、ちょっと直してくるからここ見といてくれる?」「ええで、行っといで」みたいに気軽に言える雰囲気が良い職場の方が何かとトラブルも未然に防げそうです。
と言うわけで作業服に抜け毛を付着させてラインに持ち込んでいるのが大きな原因と私は考えます。すでに抜けている毛髪ですから、いつ製品に落ちても不思議ではありません。ここを徹底的に対策すれば大幅に毛髪混入を減らすことが可能なのです。
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
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