実際は500倍? お申し出のないクレーム件数
天洋食品の餃子事件が発生した2008年は食品業界にとっては怒濤の年でした。2008年は前職では苦情受付件数が急上昇し、毛髪混入のお申し出件数が2007年の倍になりました。企業にわざわざ自分の時間を使ってまでご連絡くださる方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?
中国製毒餃子事件の影響でお申し出が2倍に
2008年は2007年より毛髪混入防止対策のレベルが落ちたわけではありません。なのにお申し出件数が増えたのは、今までなら連絡入れようとは思わなかった方々が、お知らせくださったためだろうと思います。
そして2008年は1月から12月までずっと餃子事件一色だったわけではありません。なので実際に発生しているクレームは、お申し出くださった件数の2倍以上あるはずです。
お申し出いただけるのは1/500?
私が品証に配属なってすぐの頃ですので15年くらい前の話です。毎月1回くらいしか作らない商品で、「商品の味がいつもと違う」とフリーダイヤルにお申し出がありました。着払いで送っていただき、味を確認しました。複数人で確認しましたが、正常品と比較するまでもなく明らかに変な味です。砂糖の入れ忘れでした。
その工場では半バッチで作っても500パックは出来てしまいます。でもお申し出くださったのはこの消費者お一人だけでした。賞味期限が来て値引きシールを貼っても売れなかった分、買ったものの家庭の冷蔵庫で期限切れで廃棄された分を差し引いてもそれなりの数が消費者の口に入っているはずです。口に入れた瞬間まずいとわかるのですが、他のお客様からは連絡がありませんでした。
私はこの経験から、わざわざ異常があったとご連絡を下さるのはごく一部の方しかいらっしゃらないのだと知りました。
お客様の誤解の件数 < お知らせいただけない件数
歯の詰め物やお箸の先、ソクパス(靴下を留めている金具)、タグピン(洋服などに値札を付けるための樹脂製品)、など消費者宅で入った可能性が高い異物のお申し出もあります。包装後加熱品から生きた虫が出てきたというお申し出をいただくこともあります。こういうことがあるのでついつい「消費者宅で開封後に入った異物ってけっこうな数あるんじゃないか」と思いたくなってしまいます。
「お申し出の件数は必ずしも製造工程で起きた不具合ばかりではなく、開封後の消費者による調理過程などで入った異物の件数も含まれているので実際のクレームはもっと少ないはず」と思ったほうが楽です。
しかし私は「お客様の誤解によるお申し出」より「実際はあったのに連絡をもらえなかったクレーム」の方がはるかに多いのではないかと思います。
会社全体が楽な方に流れていて、一人流れに逆らうのはかなり勇気や覚悟が必要で難しいことです。おそらくエニアグラムのタイプ1以外は集団の流れを変えていけないのではないかと思います。
普段は楽な方に流れていてもやり過ごせるでしょうが、食の安全に対して世間の見る目が変わった時にその企業の実力がはっきりと現れるでしょうね。
毛髪混入防止対策の記事一覧
番号順に読んでいただければわかりやすいかも知れません。
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- 食品への毛髪混入と報告書
- 食品工場の一般的な毛髪混入防止対策
- 食品工場が取り組んでいる更なる毛髪混入防止対策
- 食品への毛髪混入経路
- 食品への毛髪混入を防止するための粘着ローラー(コロコロ)
- 食品工場に於ける粘着ローラー(コロコロ)がけの重要度
- 食品工場に於ける正しい粘着ローラー(コロコロ)がけとは?
- 毛髪混入を防止する正しい粘着ローラーがけ(コロコロ)の手順
- 食品への毛髪混入対策の検証
- 食品への毛髪混入を防ぐ粘着ローラー(コロコロ)がけの教え方ポイント
- 食品工場での新人教育 毛髪混入対策編
- 二人で行う粘着ローラー(コロコロ)がけ
- 食品工場に設置すべき粘着ローラー(コロコロ)の本数は?
- 毛髪混入防止対策に効果的な粘着ローラー(コロコロ)の形状は?
- 食品工場入口で粘着ローラー(コロコロ)がけにかかる時間
- 粘着ローラー(コロコロ)がけの撮影方法
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